第6日目:Ⅳ【過去と未来と】
【四時間目】
普段通りに3年生はしっかりと絵を描き、2年生の一部(浩介先輩)は、がやがやしつつも絵を書いていて、たった一人の1年生である僕は静かに切り絵をしていた普段と変わらない美術室。
昨日のうちに羽の部分は終わっていて、あとは体だけだった。
体の部分は影となるところ以外ほとんど辛いところはない。僕の切り絵は、とにかく細かく、とにかく綺麗に。がモットーだ。
体を彫って、細かいところを調整する。背景や本体の色、影となる色画用紙を選び、適当な大きさに色画用紙を切り取り、ペガサスの形に穴の空いた黒い紙の下に差し込んでいく。
そして、ひとつの作品が出来上がったという喜びに触れ、片付けを始める。
浩介先輩も他の人も今日で出来上がったようで安堵の色が見て取れる。みんなは支度をし、部長以外は下校時間に家に帰った。
美術室から出た火は美術室の入っている芸術棟を燃やした。
木造であった芸術棟は、時間もかからず燃えたらしい。
当然、僕らの作品も燃え、無くなった。完全下校時刻まで美術室に残っていた部長は真っ先に疑われ、数日間学校にいない日が続いた。
後に真犯人が近所の高校生だとわかると世間の矛先はそちらに向いたが、部長をいじる人は当然いた。
事件があってからの部長の事は知らない。
数日後、芸術棟が建て替えられ、2年生の今に至る。
僕らは気づいていなかった。コンクールの提出期限が3日後ということに。
頑張っても難しいと判断した僕らは、“秘技”を使うことにした。
浩介先輩はタイムマシーンを直し、僕は先輩に言うとおりにどこでもドアを改造し、タクトはピーピーガチャガチャと変な音を出し、部長は部室を見張っていた。
僕らの作戦はこうだ。
まず、タイムマシーンを使って去年へ行き、燃えてしまう前の僕らの作品を取りに行く。
次に、部長の妄想を元に改造された、物体転送装置通称どこでもドアつかってそれらをコピーする。改造された物体転送装置通称どこでもドアは元の物体が消えない(次の転移のためのエネルギーとしてドアに吸い込まれない)ようになっている。
最後に、作品が燃えたという証拠が必要なため、作品を元の時代の元の場所に戻す。
作戦は成功し、僕らの手元には3人分の作品と、元部長の綺麗な
コンクールで僕らは上位を総なめし、美術部協会から来た手紙には、「約束通り、これからは目を瞑る」と、書かれていて更には、「裕平、お前も頑張れ」と書かれたメッセージカードまでついていた。
「美術部協会が目を瞑るってことは、なにしてもいいんだよな。裕平」
先輩は嬉しそうに言う。
「ほどほどにですよ。また、誰かになんか言われたらめんどくさいし」
「そうそう。めんどくさい。休日部活なんてめんどくさい」
そう、部長が言うと、電池の切れたタクト以外みんなが笑った。
まだまだ、ぼくらの“暇部”は続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます