第6日目:Ⅲ【過去ときっかけ】

【3時間目】

 “もしも”僕らが『暇部』じゃなかったら。

 そんな世界もあったはずだ。

 これは、美術部協会から手紙が届かないようなそんな1年前の猫多摩中美術部の話。

 「先輩。こんにちは。」

僕は先輩に挨拶をする。挨拶をしなければ何をされるかわからない。まだ美術部に入って1年経ってないから。と、いうのも先輩の外見だけで決めてしまっているのだが。

「今日は、秋季コンクールに出す絵を描けだと。腕がなるぜ。」

先輩はやる気だった。なんせ、先輩にとっては久しぶりのコンクール参加だ。先輩は前回のコンクールの時、骨折をし、入院していたのだ。

 ちなみに僕はしっかりと参加し、大賞を頂いた。

 今、僕が描いているというか掘っているのは、ペガサスだ。

鳥の翼を持ち、空を飛べる馬。実に神秘的だ。

本や、ググって出てきた画像を参考に、精密にシワまで掘っていく。

飽きやすい作業だが、出来た時の感動と達成感そして、褒められた時の少しの恥ずかしさのために頑張る。

 1時間位経っただろうか。突然、後ろで声が聞こえた。

「ゆーへー君。あーそびーましょ。」

先輩の声だ。作業に飽きたのだろう。

先輩は、飽きるといつも僕に話しかけてくる。正直言って迷惑だ。

「先輩。作業、しましょう。」

「ほら、そこ。集中する!」

巧部長に怒られた。

巧部長は、絵がとてもヘ…独特で、リーダーシップを発揮しやすい。というだけで部長になったらしい。

僕は少し苦手だ。

「お前のせいで。」

と言って、先輩は席に戻った。

僕も、ペガサスを掘ることに集中する。


 この時までは、ごく普通の美術部だと思っていた。

問題は、この次の日だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る