第2日目:Ⅰ【ドアとコンビニ】

【1時間目】

 今日も美術部は忙しい。

「おい。裕平。どこでもドア作ろうぜ。」

「先輩。何言ってんすか。」

一瞬どこかで頭でもぶつけたのかと思ったが、先輩はこういう人だったと、もしかしたら人でもないことを思い出した。

「大丈夫だよ。猫型ロボットはつくんねーよ。」

「へ?あぁ。そうじゃなくて、作れるわけないじゃないですか。」

作れるわけないと信じたかった。

「あんな単純なものがか?」

だからその答えが帰ってきた時には、うれしい反面悲しかった。

夢は夢のままにしておきたかったのだ。

「単純って。テレポート装置ですよ。魔法でもないのに。」

「お前はまだ信じねーのか。そうだ。せっかくだからあの部屋で作ろうぜ。」

「は、はい。」

先輩の威圧に押されてつい答えてしまったが、作れなかったは作れなかったで部活はサボれると『まあいいか』と思った。

 とりあえず先輩のメモをここに記す。

〜使うもの〜

板・ドアノブ・機械・信じる心←これ重要


 「よし。道具は揃った。では作ろうじゃないか。」

「この設計図でですか。コレ弟にでも書かせたんですか。」

先輩の設計図は子供の落書きのようだった。

「何言ってんだ。」

「先輩。絵上手でしたよね?」

2年前美術部に入るきっかけになった、あの絵はとても綺麗だった。

「悪いのか。」

「いや、ちょっと。あれなのにでこれか、と。」

「は?妹に書かせちゃ悪いのか?」

「先輩!ガチなんすか!」

「おぅ。妹に書けって言って書かせた。」

先輩はそういうのは頭が悪い様だ。

変な空気になりそうだったので話を変えることにした。

「そういえば先輩。エイトトエンティの新商品のパン食いました?」

エイトトエンティは「遠くても便利」というキャッチフレーズを掲げ、国外も含め、全国に店舗があるコンビニだ。

「あぁ。『しなしなプリンデニッシュ』の事か?」

「そうっす。あれ上手いのに、名前で損してません?」

「そうかもな。しなしなしてるけど、オーブントースターで焼くと上手いんだよな。」

「そうなんすか。しりませんでした。今度やってみます。」

「そういえば、裕平。エイトトエンティって遠いけど全国にあったよな。」

「はい。」

「じゃあ出来上がったら、送ろうぜ。」

「何をですか。」

「物体転送装置通称どこでもドアをだよ。」

「あの、何個作る気ですか。」

世界の国は196ヶ国という。

「そりゃ、とりあえず日本が認めてる196ヶ国とその他諸々だよ。」

「お金は?」

「部費だよ。」

「当たり前だろ。みたいな顔で見られても。」

「当たり前だろ。」

「はぁ。」

どこでもドアを作り終わるのにはまだまだ時間がかかりそうだ。


続く

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