第2話

佐々木 玲奈 17歳。

私は今人生の中で一番価値のある女子高生というブランドの中で生きている。

今の世の中、女子高生が右と言えば右。左と言えば左になる

そんな世界なのだ。

勉強も運動もそれなりにこなして、若い肌を化粧でボロボロにして

似合わないブランドの服やアクセサリーを身につけて

思っても無いくせに友達同士で可愛いの言い合い。

毎日がこの繰り返し。

男の子には自分が一番可愛く見えるように媚を売って

子供同士の恋愛の中で結婚だのなんだのほざいて、片方が浮気して結局別れる。そんな仕組み。


周りの子をそんな風に見下すけど、結局私もその中の一部なのだ。


今日も退屈な日が始まる。

それなりに仲のいい友達とトイレに行って、ご飯を食べて、誰かの悪口を言って。

嫌という訳では無いけど、この日常に飽きていたんだ。


「うちの学校さぁ、バイトできないのきつくない?」


ふとそんな会話から始まった。

今思えばこんな会話が無かったら、私はあんな事にはならなかったかもしれない。


そう言ったのは一緒にいるグループの中の恵里奈だった。

恵里奈は彼氏を大事にしている子で、なにかと彼氏にプレゼントをあげたがるのだがお小遣いだけだと厳しいらしい。


「つか恵里奈はさぁ彼氏に貢ぎすぎじゃね?」

少し口が悪いのが春香。性格も少しきついが割と正義感のある子だ。


「そうかなぁ?でも翔くんが喜ぶならいいんだ〜。

そうじゃなくてもバイトはしたいよ〜」


確かにうちの高校はバイトをするには少し条件が厳しいのだ。

進学校でもあるので、バイトをできるのは成績が学年30位以内に入ってる生徒だけだとか、成績が普通でも部活で成果をあげている生徒だけだとか。何かしら結果を出していないとダメらしい。

そしてバイトは夜の8時まで。

帰りのHRが終わるのが16時頃。そこからバイトがあるような街に出るまで1時間程。平日はもうほとんどバイトに入れるような環境ではなく、土日しかバイトができないのだ。

そしてこの条件…

とてもじゃないが私達のグループでクリアできる人間はいないようだ。


「いいよな〜愛理の家は金持ちで!」

「そんなこと無いよ、貯めてたお小遣い使ってるだけだしさ」


愛理はグループの中のリーダー的存在。

でも引っ張るようなタイプではなく、恵里奈や春香が騒いでるのを見守ったり、遊ぶ場所を決めてくれたりする感じだ。

私は愛理といる時が一番気が楽だ。


「土日できるバイトとか、夏休みだけのバイト見つかるといいね。

そしたら恵里奈も余裕できるでしょ」

愛理が言う。

「そーだよねー…頑張る!翔くんの為に!!」

「結局彼氏オンリーかよ!!」


ははは、と渇いた笑いが出る。

みんないい子だけど、お互いの深い所は知らない。

今の私達は彼氏彼女じゃ無い限り他人の面倒までみていられないからだ。

表が良ければ裏なんてどうでもいい。

恵里奈が、春香が、愛理が、裏で何してようがどうでも良かったし

所詮他人事だと思っていた。


私自身、自分の家の事を話したりはしなかった。

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