ASSASSIN

このままぬるい愛の中

「おかえりロキ」


王子フェイマーは笑った。

その笑顔には労いだけでなく、

他の感情が僅かに差されていることを、

僕は知っていた。



幼なじみのロキは今日も暗殺に出向いていた。

僕は疲れ切ったロキに歩み寄って、その銃を持ってあげた。


──重い。


こんな重たい物を担いで、彼女は一人で頑張ってるんだ。

冷たい鉄の感触と、僅かな火薬の臭い。


彼女はついさっき、人を殺めたんだ。

その痛みが、重みが、銃身にのしかかってるみたい。


「ロキ、」


「ごめんクレア、また…後にしてくれないか」


「あ………うん」


ロキは辛うじて笑ってはいたけれど、

その凛とした声質に覇気はなく、

隠しているであろう疲れも滲み出ていた。 

ロキは有能な狙撃手だから。

父親のセティさんみたいに体力もあって度胸だってあるかも知れない。


でもそれ以前に、ロキは女の子なんだよ。


「ロキ……」 


教えてください。


その儚い背中が消えてしまう前に。


僕もそれまでに、強くなるから。

その大波を受けとめるから。


教えてください



(限界になる前に)



(終)


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