世界はいつだってきみだけに優しい



馬鹿みたいに晴れ渡った昼下がり。

元々悪い頭が更に悪くなるようなドロドロした日差し。

舌打ちしたくなる湿気。

テーブルにパタタッと汗が落ちた。

拭いても拭いても噴き出すそれに一喝。


「アッツイ!!!!」


堅いデスクに俺の声が反射して頭に響く。


「このくらいでくたばったら、この先続かないぞサーガ」

「…先輩よく平気っすね…」


目の前で黙々と書類に目を通す3つ年上の先輩、ネロ。

強くてしっかり者で頭も良くて信頼されてて…俺の憧れだ。

こんな蒸し暑い中で仕事をやってのける先輩はすごい。

彼と組める事は、俺にとって誇らしい事だ。



ただ、ひとつだけ。引っかかる事。


「ネロくんっ、サーガさん!」


澄んだ花のような声。

彼女─リタは先輩の恋人。

笑顔で向かってくる彼女の絹の様なブロンドの髪が目を惹く。

そしてなんだかホッとする良い香り。

懐かしい匂い。

スタイルも良いし、優しいし。

相っ変わらず綺麗だな、なんて。

最近さらに可愛くなった気がする。




「お疲れさまです!冷たいお茶、持ってきました」

「さんきゅー」

「ありがとう、リタ」

「いえ。お二人とも、無理しないでくださいね」


可愛い笑顔。天使みたいだ。

先輩羨ましいなぁ…


リタが去って行った後、

まだなんか良い匂いしてる。


「いいなぁ先輩」

「何が?」

「あんな可愛い彼女いて」


先輩は面食らったような表情をしたが、すぐに笑って書類に視線を戻した。


「お前にもすぐ出来るよ。」

「ホントっすか?」

「あぁ。そしたら俺にも紹介しろよ」


ご機嫌な表情のまま、先輩はリタの持ってきた冷茶を飲み干す。

喉仏が大きく上下するのを見て、俺も喉の干上がりを鮮明に感じた。


傍らにある俺のグラスを見つめる。

大きな氷に鮮やかな色の煎茶。

表面には雫が浮かび、つぅと流れ落ちる。

いかにも冷たそうだ。


(……いただきますっ)


グラスを傾け、口の中になだれ込む冷たい煎茶を飲み干す。

喉を伝って胃まで落ちる感覚と、開け放った窓から差し込む日光。

身体に染み渡る水分。しかしまた汗になって抜けてしまうのだろう。俺みたいに。

……なんていう気取った思考を暑さのせいにした。


そんな昼下がり。




(終)


サーガくん現在18歳。

まだまだこれからだ!笑



Thanks:水葬 様

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