第11話サンド君とマリィベルちゃんとカイウスさんとカインさんとビアンカさんとリリィさんとバルガーさん


「なんだお前ら、そんなに目ェ開いて。 瞬きしない選手権か?」


「……」

「……」

「……」


「マリィベル。 酒だ酒。 あん? なんだマリィベルまで固まってんのか……」


「……」

「……」

「……」


「ビアンカ、何とか言ってやってくれよ」

「リリィを出しな。 そうしたらなんでもしてやるよ」

「そういう事言うからあいつお前がいない時に来たんだと思うぜ?」

「リリィはそんな子じゃないさね! それで? 受けたのかい?」

「受けるわけねーだろ。 俺はここで酒飲んでるのが一番だっての」

「だと思ったよ。 全く、あの子もなんでこんな奴を……」


「お、おいバルガー」


「俺が知るかよ。 言い寄ってくれてんだ、ありがたく頂戴するだろ普通」

「あたしの旦那もなんでこんなのを推すのかさっぱりさね」

「あぁん? ビアンカお前、昔は俺に期待してるだのなんだの言ってたじゃねぇか」

「10年前の話だよ。 こんな呑兵衛、今になっても推すわけないじゃないか」


「おいバルガー」


「ギャハハハハ! そりゃそうだ。 そういえばビアンカお前、遠征行ってたんだろ? サキュバス連れたガキにでも会ったか?」

「……相変わらずの先見だねぇ。 ほんと、なんでこんな奴にこんな才能が宿るんだか」

「ギャハハハ! お前も同じだろ? 元白百合騎士団団長さんよ!」

「はん、お前と同類にされるほど落ちぶれたつもりはないけどねぇ……」


「バルガー!」


「んだよサンド。 なんだ? 泣きそうなのか?」

「ばっ!? ちげーよ! お前7日も留守にしやがって!」

「それがお前に何か関係あるのかよ。 つか、マリィベルもそろそろエールをだな……」

「あー、バルガー。 サンドは心配して――」

「カインさん!? 何言ってんスか!」

「おおお!? サンド思ったより力強くなってんじゃーん!」


「バルガーさん……リリィさんとはどういう関係なんですか?」


「ちょ、マリーちゃん直球過ぎるよ!」

「遠まわしに聞くのも面倒だろう。 バルガー、あの騎士団長とはどういう関係だ」

「カイウスさんまで!?」


「俺の嫁さんだよ。 エールの資金源だな!」

「ふんっ」

「おっと、ビアンカお前ギルド内でショート振り回すんじゃねーよ。 Bランクのか弱い中年が死んじまったら問題だろ?」

「軽々しく避けておいてよく言うよ! 何年も依頼受けてないんだ、あたしより強いくせして少しは国に貢献しな! そしてリリィをあたしに寄越しな!」


「バルガーがビアンカより強い……? マジかよ……」

「アマゾネスより強いだと……。 何ゾネスなんだ……」


「あいつが自分からついてくんなら持ってっていいぜ。 まだ近くにいるだろ」

「なんだって!? リリィ!」


「行っちゃった……。 どんだけあの白百合の団長に会いたいんだよ……」

「いや、待て。 そこじゃない。 問題はそこじゃないぞ」


「バルガー……あのリリィって人が、お前のお嫁さん、なのか?」

「ギャハハハハハ! お嫁さん、お嫁さんだってよ! かわいいなサンド!」


「やはり、セントラケセタとスタークァストは同じなんですね?」


「ん、そうだぜ。 王族連中が白百合騎士団の夫がこんな呑兵衛じゃ外聞が悪いってんで、名前を分けたんだ。 俺みたいな荒くれ者に姓があるわけないだろ?」

「やっぱりかー。 明らかに貴族サマみたいな姓だもんねー」

「だったら剥奪でもよかったんじゃないか? 姓が無くなって困る事なんて、ギルドじゃ早々ないだろう」


「――それは、困る。 お揃いが良かったのだ。 折角結婚できたのに、何の繋がりがないのは面白くないではないか」

「……リリィ」


「白百合の……騎士団長!」

「ビアンカはどこ行ったんだ?」

「先代はやり過ごさせてもらった。 長くなるのでな」

「結構会ってないんだろ? 少しくらいかまってやれよ」

「私はスタークァストを見送りに来たんだ。 先代に会いに来たわけではない」

「見送るってったって……俺はここで飲んだくれるだけだぞ」

「うむ。 どうだろうか、私も一緒に飲んでもいいか?」


「バルガー! リリィいないじゃな――」


「失礼する。 スタークァスト、今日は家に帰るからな」

「あいよー」


「待ちなよリリィ! あたしから逃げられるとでも思ってるのかい!」

「私も成長したのです先代! 今度こそ逃げ切って見せます!」




「なんでしょう……聞いていたイメージと大分違いますね……。 あれ、サンド君どうして打ちひしがれているんですか?」

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チンピラのサイドストーリー 劇鼠らてこ @Lartie

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