第8話カインさんとカイウスさんとビアンカさんとマリィベルちゃん
「ビアンカー、結局、バルガーとリリィさんの関係ってなんなのさー」
「そう言うってことは、バルガーが欠片も聞いてないんだね」
「あぁ。なにも言わずに出ていって5日目だ」
「ふーん。なら、帰ってくるまであと二日は懸かるだろうねぇ」
「わかるのー?」
「あいつが前戦で戦っていた15、6年も前は、しょっちゅう連れていかれてたからねぇ。いかなくなったのは、8年くらい前からかねぇ」
「俺達が冒険者になった時期……」
「それでビアンカー、二人の関係教えてよー」
「あー、ここまで仄めかしておいて悪いんだが、バルガーがなにもいってないならあたしはなにも言えないよ」
「えー! 今完全に話す流れだったろー!」
「流石アマゾネス。やはり脳筋か」
「なんとでも言うといいさ。ま、他の事なら話してやる。なんか聞きたいことあるか?」
「リリィ・セントラケセタ。あの騎士団長サマはどんな人物なんだ?」
「おぉ! 一番にそれを聞いてきたあんたはポイント高いよ!」
「ポイント……?」
「リリィは、あたしが騎士団長だった頃の副長でねぇ。あたしは真っ当な騎士団長じゃなかったにも関わらず、辞める最後まで慕ってくれた良い子だよ」
「真っ当な騎士団長じゃなかった?」
「なになにー、コネとか使ったってことー?」
「そういうんじゃない。ただ、当時からあたしはこんな気質でね? 色々型破りというか、今から思えば破天荒な行動が多かったんだよ」
「あぁ、目に浮かぶな」
「簡単に想像できるねー」
「るっさいよ。でも、リリィはただイエスマンに投じる訳でもなく、しっかりと自身の意思を以て、あたしと向き合ってくれた数少ない子なんだよ」
「他はイエスマンだったんだな」
「逆らいでもしたら死ぬより恐ろしい目に遭うって、本能的にわかってたんじゃないー?」
「あんたらいちいち煽らないと生きていけないのかい? ま、そんなリリィをあたしが好きになるのに時間はかからなかったさね」
「おっと、ここで禁断の華が咲くのか」
「白百合だしねー」
「ふん、愛恋の好きじゃあないよ。あたしには最愛のダーリンがいるからね」
「ビアンカ、お前の話はどうでも良いんだ。俺達が聞いているのはリリィさんに関してだぞ」
「ビアンカも結婚してるのかー。俺達もそろそろ考えないとなー」
「急かすな急かすな。あたしの旦那はね、現黒薔薇騎士団団長なんだ。そもそも、騎士団を止めた切欠は子供が出来たからなんだよ」
「だからそんなのどうでも――」
「え、じゃあリリィさんと毎週逢瀬しているのは誰なのですか?」
「うわぁ!? マリィベル!? 気配無かったよ……?」
「あり得ん……。現役Aランクの格闘家とシーフが揃って気が付かなかっただと……」
「腕は鈍っちゃいないようだね、マリィベル。それに、ある程度聞き込みもしてきたようだ」
「マリィベルって何者ー?」
「わからん。ただの受付嬢だと思っていたのだが……」
「ニヤニヤしてないで答えてください、ビアンカさん」
「必死だねぇマリィベル。サンドのためかい? おぉ、怖い怖い、そんなに睨まないでくれよ。ま、あんたの調べた通り、リリィと毎週逢瀬してるのはあたしの旦那さね」
「えー、なにこの状況ー。修羅場ー?」
「堂々と旦那の浮気を認めるか……」
「それで、ビアンカさんは良いんですか?」
「良いも悪いも、あの二人がデキているわけじゃないからねぇ。ウチの旦那もリリィも、本当に純粋な密談しているだけだよ」
「純粋な密談とは之如何に」
「現両騎士団長が密談とかー、ヤバいんじゃないのー?」
「確かに。謀反だと疑われかねんな」
「あー、それも大丈夫だ。なんたって密談の場は王族が用意してるからねぇ」
「! やはりそういうことでしたか。スタークァストとセントラケセタ。聞いたときから気になってはいましたが」
「マリィベルは頭の巡りがいいねぇ。だけど、本人達が自分から言うまで、バラしちゃだめだよ?」
「……はい。この命かけましても」
「話が飛び飛びでわからないー。つまりどういうことー?」
「根本の部分はよくわからんが……、あいつら二人の姓には重要な、それこそ王族の関わるような事情があって、そしてそれは他言無用という事ですかいいのか?」
「カイウスも頭回るように成ったじゃないさ! そういうことだ。ま、あと二日もすれば帰ってくるんだ。その時に直接聞くんだね」
「リリィさんじゃなくバルガーに聞くのかー。俺はもう大体わかっちゃったかなー」
「さ、あたしは宿に帰るよ。森の中でサキュバス引き連れたガキと戦って疲れてんだ」
「それってー」
「お前、そりゃあ」
「ビアンカさん、今日の夜にでもギルドにいらしてください。ギルドマスターと共にお話を聞きますので」
「なんだいあんたらいきなり……。あー、今は良い。寝させてくれ。後でねー」
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