第2話サンド君とバルガーさんとマリィベルちゃん2

「フォー・オブ・ア・カインドだ」

「……」

「これで、この三本勝負は俺の勝ちだな」

「く……」

「エール六日分、ホラ、寄越せよ」

「く……は……」

「カードじゃ俺には勝てないんだよ。諦めて金寄越しな」

「ギャハハハハ! だ、駄目だ! 耐えきれねぇ!!」

「な、なに笑ってんだ! クソ、おめぇらもニヤニヤしてんじゃねぇ!!」

「サンドよぅ……サマするのは別に構わねぇが、もちっと練習してきたらどうだ?」

「は、はぁ? な、なにいってんだ! 俺はイカサマなんてしてねぇぞ!!」

「ギャハハハハ! じゃ、じゃあよ、サンド。自分が出した手札よく見てみな」

「俺の手札……? クローバーのキング、スペードのキング、ハートのキング、クローバーのキング……あっ」

「ギャハハハハハ!! は、腹痛てぇ!! 六日分のエール代、ありがとよ!!」

「ク、クソ、これじゃアレが買えねぇ……」


「あの……サンド君」


「げっ」

「マ、マリーちゃん!? な、なにかな」

「サンド君、右端のクローバーのキングの事なのですが……」

「あーあーあーあー」

「右端のクローバーのキング……?」

「はい、何か、他と比べて厚みがあると思いませんか?」

「えっ? ほ、ほんとだ!! って、まさか……あぁ!! 下にダイヤのキング!!」

「はい、先程、サンド君が役宣言した時にバルガーさんが重ねていました。ですが……」


「ちっ、これだからガキってのはよぉ、遊び心ってのをわかっちゃいねぇ」

「マリーちゃん……気付かせてくれてありがとう。さて、バルガー。観念してエール六日分、払って貰おうか」

「く……」

「どうした? もうイカサマは使えないぞ? って、何ニヤニヤしてやがる!!」


「ギャハハハハハ!! やっぱ耐えきれねぇ!!」

「はぁ? そういえば、お前の手札はどうだったんだ? 俺にイカサマの容疑ふっかけるくらいだ、低い役だったんだろ?」

「あ、サンド君、バルガーさんは多分……」

「ギャハハハハハ!! 気になるなら自分で見てみな!! 俺はカードにゃ触れねぇからよ」

「はぁ……? ダイヤのクイーン、クローバーのクイーン、スペードのクイーン、ハートのクイーン……ま、まさか」

「ギャハハハハハ!! ホ、ホラ最後の一枚めくれよ!! ギャハハハハハ!! 呼吸が出来ねぇ!!」


「ジョーカー……ファイブ・オブ・ア・カインドだと……」


「サンド君、バルガーさんは、勝てる勝負でしかイカサマしない変わった人なんですよ」

「そ、そんな……」

「ホラ、エール六日分、寄越しな」

「うぐ……」

「なんだぁ? 泣いてんのかぁ? 弱虫サンドに戻ったのかぁ?」

「う、うるせぇ!! ほらよ、金は置いとくぞ!! 依頼受けるから勝負はもう終わりだ!!」

「おぅ、たくさん稼いでまた俺に貢いでくれ」

「誰がバルガーなんかに!! くっそおおおおお!!」


「人が悪いですよバルガーさん。……そのお金、本当にエールに使うおつもりで?」

「ギャハハハハハ、もちろんだ、と言いたい所だが……生憎金には困っちゃいねぇんでな」

「ならなんであんなことを……」

「ギャハハハハハ!! 反応が楽しいからに決まってんだろ!! お前のアシストも中々良かったぜ! 上げて落とされた時のあいつの顔! ギャハハハハハ! たまんねぇ!」

「私はそんなつもりは……いえ、何を言っても無駄なのでしょうね。私は業務に戻ります。お騒がせしました」

「あぁ、そうだマリィベル。あいつが、サマしてまで買いたかったモン知ってっか?」

「……? いえ、知りませんが」

「なら良いんだ。さ、とっとと戻りな」


「こんな端した金で買った指輪なんて妥協モンに決まってんだろ。俺が認めるその時まで、預かっておくぜサンド。」

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