第7話 伝説のナイフ使い?
はがねのナイフを買ってしまって、おこずかいも底をついた私は他にやることもないので武器を使う練習に励むのであった、なんてね。
実は某マンガに載っていたスカートの中に
スカートが邪魔で、なかなか一瞬ではナイフを構えられないのよね……ここは一回、手をスカートを叩くように前から後ろに動かし、浮いたスカートの裾に手を突っ込んで、ナイフをホルスターから引き抜くと同時に身体の前で構える。
けれど、これだとナイフを前に突き出しただけで刃が出ていない(『つらぬき童子』は折畳刀っていうくらいだから普段は刃が畳まれている)
「う~む、西部劇のガンマンみたいにかっこよく出すには、かなり練習が必要みたい」
夕ご飯までの時間、ずっと練習したんだけどなかなかうまくいかない……ママに『夕ごはんの時間ですよ』って呼ばれて、食卓に行く前にちらりと、ぼうけんの書を開いてみると、次のような書き込みがされていた。
勇者は武器の使い方の練習にはげむ。
伝説の『ナイフ使い』のもとで。
「伝説の『ナイフ使い』って何?!……私の頭の中にはマンガの中のような、変な武道家のカッコウをしたおじいちゃんのイメージしか浮かばなかった。まさかとは思うけど『ぼうけんの書』って、うちのおじいちゃんが書き込んだりしてないよね……ぼうけんの書がいっきに怪しくなってきた。でも消去法的に我が家でナイフが使えそうなのは……若い時には勇者だったはずの『おじいちゃん』だよね。
案の定、夕食後にナイフの練習をしていると、おじいちゃんが声をかけてきた。
「ほう、加奈。ナイフの練習をしているの
私はあまりに、くだらないダジャレにコケそうになりながらも、なんとか踏みとどまって返事をした。
「あっ、おじいちゃん……うん。練習してるんだけど、なかなかうまく使えなくて」
「ほう、『つらぬき童子』か。なかなか良いものを手に入れたな……どれ、貸してごらん」
おじいちゃんはナイフを受け取ると、普段からは想像できないような軽やかな手つきで一閃、刀身が一瞬で起され虚空を切り裂いていた。
「……すごいっ! どうやるの?!」
私は、おじいちゃんのナイフの扱い方にびっくりして聞く
「肥後守はな、この刃の反対側の『チキリ』を叩いた反動を使うんじゃ」
早速やってみるが、うまくいかない。ホルスターから抜くのと刃を起こすので、どうしてもダブル・アクションになってしまう。
「ふむ……ホルスターに入れている時のナイフの向きが逆じゃの。それから抜くときに『チキリ』を引っ掛けながら、握りは掌と親指で持つんじゃ」
そう言いつつお爺ちゃんは、私に見えるようにゆっくりとやって見せてくれた。
「こう?」
「うむ……だいたい、そんなもんじゃろ。少し『チキリ』を大ぶりにした方が加奈には扱いやすそうじゃの。どれ、ワシが直してやろう」
そう言うと、おじいちゃんは私のはがねのナイフを持って行ってしまった。
「(……それがないと練習できないんだけど)」
でも、伝説のナイフ使いに文句を言うのは恐かったので、おとなしく返してくれるのを待つことにした。
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