第2話 衝撃の誕生日

 私の名前は友枝 加奈ともえ かな。ようやく先月、16歳になったばかりの高校二年生。それは今から、ちょうど一週間まえの事なんだけど……


「加奈、起きなさい……もう朝ですよ」

いつもより余裕のある感じでママが私を起こしに来た。春休み中なのに起こされるなんてどうしたんだろうと少し不審に思いながらパジャマのままリビングに行くと、テーブルの上に朝御飯と一緒に何か包みが置いてあった。

「誕生日おめでとう、加奈ちゃん。これであなたも16歳になったのね」

……ああ、そういえば誕生日か。朝一番に誕生日プレゼントを渡されるとは思っていなかったので、ちょっと面食らったけど、とりあえすお礼を言っておこう。

「ありがとう、ママ……これ、開けてみていい?」

「ええ、どうぞ」

ニコニコとほほ笑んでいるママの前で、包み紙を開ける……なにかな? 重さからすると本のようだ。


 自慢じゃないけど、私は本が好きだ。小さな頃に絵本に目覚めてから、童話から動物モノ、ファンタジー……片っぱしから読み続け、おかげで『妄想過多なメガネ少女の出来上がり』となってしまった。

「これは……?」

出てきたのはイマドキあまり見ないハードカバーの重たい本。洋書なのかタイトルも著者名もよく分からない……ぱらぱらと中をめくってみても挿絵の一つもない……っていうか、コレ私の知っている文字で書かれていないような気が……

頭のまわりに大きめのクエスチョンマークを浮かべながらママを見つめ返すと、相変わらずニコニコしたままこう、のたまった。

「これはね、ウチに代々伝わる『ぼうけんの書』っていう本なの」

「……ぼうけんの書?」

「そう。 あなたのお父さんも、おじいちゃんも、そのまた御先祖様も、みんなこの本を持って冒険に出かけたそうよ。 16歳の誕生日から……」

私はメガネの奥で眉を八の字にしながら

「はあ? そんな話、初めて聞いた……っていうか私、女の子だし」

ママに文句を言ったのだけれど、ママは全然気にしてない感じで

「そりゃそうよ。 だってママも今日、初めて話したんだもん」

と今朝、一番の笑顔で返された。


 それから何時間も、延々どこからツッコムべきか困る話を聞かされた結果、私の出した結論は『ウチの家系って、かなりヘン……』という事だった。


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