私はマネキン

一ヶ月間私はカオリさんにいいように遊ばれた。ある日は着てきた最初の服を着せられ、ある時は下着だけで立たされ、ある日はバラバラに分解されて一緒にお風呂に持ち込まれたりした。

ただ、カオリさんは少しづつ飽きてきたのか、私に構う日が少なくなってきた。ある日は私に一瞥もくれなかったり、帰ってきてバッグを私の腕にかけてそのままベッドに倒れこんでしまったり。そうして私は少しずつカオリさんのマネキンから家具の一つに扱いが近くなっていった。

身体をいいように弄ばれる日々は気持ち悪かったのだけど、こうやって使わない椅子のように部屋の隅に佇んでいるだけの日も私は寂しくて辛く感じられた。


ある日、カオリさんは大きな段ボール箱を抱えて持って帰ってきた。中には緩衝材が詰まっている。段ボール箱を私の前に下ろすと、おもむろに私に語りかけた。

「メグミちゃん。私もう飽きちゃった。だからね、マネキン業者に売ろうと思うの。私は新しい子を捕まえるわ」

「(えっ 売るって……)」

「さようなら、メグミちゃん。」

カオリは私の手を外すと、ビニール袋に入れる。そしてビニール袋の上から緩衝材を巻きつけて、段ボールの中に放り込んだ。手、腕、脚とどんどん私は解体されていく。でも今回は違うのだ。もうカオリの手で元に組み上げられることはないのだ。

「(やめてぇ! 飽きるって何よ、私をこんな風にして…! 飽きたんだったら元に戻してよ!!)」

「デパートかスーパーかどこだか知らないけど、新しいお家でもがんばってね」

カオリは適当なことを言う。胴体が包まれて段ボールに入れられた後、ついに頭が緩衝材に包まれる。視界が真っ白になって何も見えない。

バラバラになった私は段ボールに詰め込まれると、上から蓋をされた。真っ暗だ。ビビーッとガムテープの貼られる音が聞こえる。そうやってパッキングをされると、そのまま私は宅配業者に回収されてしまった。段ボールが知らない人の腕の中でゆらゆらと揺れている。ああ。本当に私売られちゃうんだ……。

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