プラスチック化する身体

「ハッ」

私は目を覚ます。頭が重い。肌がなんだか薄寒い。寝起きのためか動きのぎこちない手で身体に手をやると私は服を着ていないことに気付いた。気が付くと私は裸になっていたのだ。

目で辺りを見渡すと、どうやら私はさっきまで紅茶を飲んでいたテーブルの上に寝かせられているらしかった。カオリ先輩はさっきまでと同じ位置に座りながら本を読んで居た。そして私が目を覚ましたのに気が付く。


「あら? 起きたのね。」


「カオリさん! これ、何の真似ですか!?」

寝ている間に私を裸にひん剥くなんて。紅茶になにか混ぜられていたのだろうか。

「うふふ。メグミちゃんには入学当初から目を付けていたのよ。紅茶のおかげで身体が痺れて動けないでしょう?」

カオリ先輩はニッコリとした笑顔を私に向ける。こんなことをしておいて何なんだろう。私は少し怯んだ。カオリ先輩は本を横へ避けると、代わりにプラスチックの容器に入ったクリームを手に取る。その手にはビニールの手袋が嵌められている。

私は藻掻いて逃げようとするものの、身体が痺れて動けない。

「ね? 今日は楽しみましょう?」


カオリさんは手のひらに肌色のクリームをいっぱい手に取ると、私の無防備なお腹にボトリと落とした。「ひっ」とおもわず私は声を漏らした。室温まで冷えていたクリームが冷たく感じられる。

「そんなに恐がらなくていいのよ?」

カオリさんは興奮で高ぶった声で私に話しかける。一方の私はただただ戸惑いと恐怖しか感じていなかった。なんなのこの人? 百合レイプ!?

カオリさんは私のお腹に落としたクリームの塊をお腹から胸へと広げるように両手で私の身体をマッサージしてきた。ピリピリと痺れていた感覚が人の手で触られて、ビリビリとした快感になる。

「ぅう……アッ」

思わず私は赤い吐息を漏らしてしまう。

「そうよ。力を抜いて、私に身体を委ねて……」

あの紅茶には何が混ざってたんだろう、そしてこのクリームはなんなんだろう……。


カオリさんは大きくて熱い手で、私の身体の隅々を弄った。ビニール手袋越しとはいえ、熱い肌の感覚が伝わってくる。いや、熱いのは彼女の手だけではない。私の身体も発熱していた。

よく知らない人間に呼び出されてこうやって手籠めにされているのに、どうして感じてしまうんだろう。私は悔しかった。心は冷えきっていても身体が否応なく反応する。肌に塗られているのは非合法な性感クリームか何かだろうか。

「はぁはぁ、……ぃ、やめて……!」

カオリさんは嫌がりながらも身体を紅潮させている私を見て、おもしろがっていた。

クリームと紅茶の影響だろうか。ピリピリとした肌にカオリさんが優しくタッチする。腕からゆっくりと肌をさすっていき、二の腕まで到達する。ああっ もっと。その先まで。肩から胸まで触って欲しい……!そういった私の気持を見透かしているかのように手は腕の方に折り返して戻っていく。こうやって全身を焦らされ興奮させられた私は、反応温度寸前まで温度が高まったダイナマイトの様に不安定な存在になっていた。あと少しの衝撃でも受けたらバラバラに爆発してしまいそうだ。


「ねぇ。暑いでしょ。紅茶もっと飲む?」

カオリさんはそう呟いてから有無をいわさず紅茶のカップを私の口に持って来た。半開きになった私の口にもうぬるくなってしまった紅茶を注ぎこむ。冷えていたものの、全身を熱くさせ汗をかいていた私には染み渡るような味だった。

カオリさんは私の口の端に滴った紅茶をビニール手袋でグイと拭った。「口の中にもクリームを塗らなきゃね」と言うと少量のクリームが私の口に侵入してきた手で舌や唇などにグリグリと塗られる。唇に触れられた私は思わず願望を口にしてしまった。

「ねぇ、カオリさん。キスをして……。」

そう。こんなにも私の身体を高めておいて、キスの一つもカオリさんはしてくれていなかったのだ。私を愛しているからこのようにしたのではなくて、私をただ弄びたいだけなのだろうか。

私の要求を聞いてカオリさんは少し寂しそうな顔をすると、囁くように答えた。

「キス……。それはできないわ。私がどうして紅茶を飲まなかったのか、私がどうしてクリームを塗るのにビニール手袋をしてるのか。それをこれから教えてあげる。」


カオリさんはピンク色に染まった私の胸にある熟れた果実に手を優しくかぶせる。そして人差し指で乳首からずれた所を、トン、トン、トン、と叩く。ああ。中心まで触って欲しい。胸の頂点では白い私の肌によく生えるピンク色の乳首が健気に勃起していた。そこにカオリさんの人差し指が優しく触れ、クリクリと刺激する。

「はぁぁ、くすぐったぁ……ぁぁぁああんぅぅ」

「じゃあ、いくからね」

そう言うとカオリさんは思いっ切り私の乳房を鷲掴みにした。今まで焦らされるだけでしかなかった私の身体は大きく反応し、胸の上で爆弾を落とされたようだった。

「……かは、ふにゃぁぁぁぁあああああっっ!!」

突如として全身に駆け巡った快感に私は身体を弓なりにビクンビクンと震えさせる。


まだ反応している私の身体にお構い無く、カオリさんは痺れて動けない私の手を握った。そして先ほど強く刺激した乳房に私の手を持っていく。しかし、感じられたのは温められたプラスチックのような感触だった。

「ねぇ、わかるかしら。この硬くなっているのがあなたの胸よ」

「え? なにが……」

「あの紅茶とクリームはね、快感に応じて人をプラスチックみたいに固めちゃうの。ああ、もちろん元には戻らないわよ。」

カオリさんはニヤリと笑いながら淡々と説明する。え? プラスチックって何!?

「私、マネキン作りが趣味なの。あなたみたいな可愛い子でマネキンを作るのが、ね。」

カオリさんは私の耳元で囁いた。カオリさんからは石鹸の良い匂いがした。


「それでねぇ、この、固まったところと生の皮膚の境目が快感ポイントなのよ。」

カオリさんは私の身体を揉む手を休めずに胸の周りを人差し指でなぞった。胸はカチコチに固まってしまっていて、その固まった部分と柔らかい周りとの境目がむず痒い。

カオリさんはその快感ポイントを、グッグッっとマッサージするように押し込んで、私に刺激を与えてきた。私は思わずのけぞってしまう。

「ん、んあっ、はわわあああああんんんんぅぅぅぅ!!」


「か、かは……、アガガ、はぁぁぁ」

ピキピキピキ……とゆっくりと私は全身が固まっていく。私はヒューヒューと息を漏らす。

「胸も背中も固まっちゃって息がしづらくなっちゃったかしら。」

カオリさんは今度は私の下半身を揉んでいた。私つま先まで固めきると、最後は私の顔だ。

「ねぇ。そんなに苦しそうな顔をしないで。固まっちゃったら元には戻せないのよ。」

そう。表情も、固まってしまった身体ももう元に戻すことはできない。

カオリさんはグイッと私の顔を親指で揉んで、私を無理矢理笑顔にした。私は首から少しずつ固まっていく。ピキ、ピキピキピキピキ……。

「ああ…… ぁああ……、。 ……。」

すべての作業が終わった後、テーブルの上にはメグミと似たよくできたプラスチック製の人形が横たわっているのみであった。

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