第5話 Mrダオ

さて精鋭の人格の話ばかりしてきたのでここで少しネタ的な人格の思い出話をしよう。私はこの人格をMrダオと名付けた。「だお?なんだお?何か用かお?」という変なしゃべり方をする人格だったからである。かの2ちゃんねるのマスコットキャラ、やる夫を原点にした人格であることに疑いの余地はなかった。正直大変困る人格であった。何が困るかというと私の私生活がバレるからである。自分が2ちゃんねらーだった、などというのは社会的にはつまはじき者扱いされてしまう恐れがあった。決して世間体はよくないのが2ちゃんねらーというものである。なのでこのダオ、半ば指名手配に近い扱いになった。西部劇のBGMをかけながら懸賞首のポスターになってる姿がとてもよく似合うキャラで、私も血眼になって大捜索をすることとなった。このダオ、逃げ足とかいう以前の問題でどこに活動拠点がある人格なのか謎であった。ちょっと普通の人格とは毛並みが違ったのである。初期のころは視界の端にAAを張り付けたように姿がちらついていた。特に何か害があったわけではないのだがそんなものを四六時中眺めたがる人間というのもいないだろうと思う。まあ害はないだろう、一時はそう思った。が、そう考えるのはちょっと甘かった。それで終わらずしゃべりだしたからである。このダオ、困ったことに本音の生き物であった。ずけずけと言いたい事をずばりいってしまうタイプの人格だったのである。だが私生活を暴露する人格など百害あって一利なしでしかない。そのため口封じをする必要があった。なので私もダオにはかなり厳しく対処した。最後には怒り出して。「しゃべる肝臓だお~!珍獣だお~!こ・ろ・すお~!」と叫ぶに至った。ちなみに叫んだのは救急車の中である。このダオ、肝臓系の人格ではないかという疑惑が持ち上がっていた。そのように叫んだということは本人もその気になっていたということである。実際に肝臓であったかは神のみぞ知る話でしかない。あまり本気にしないでいただくとありがたい。臓器系人格というのは山ほどいたが、このダオはかなり特殊な人格であった。このしゃべりが独特という特徴は別の人格にも表れており、突然関西弁をしゃべりだす人格が現れたときは驚いた。私は関東の人間であるが、3年程関西に暮らしていたことがある。そのせいか今は完全に忘れたはずの関西弁を流ちょうにしゃべる人格が飛び出してきたときは驚かされた。これを扱えたのは主に2人の人格で「ナカ」と「長老」という人格であった。ナカはかなり若い男に近い人格で特徴的なシンボルカラーらしきものも持っていない、没個性的人格ではあったが、ある理由により同情された人格である。それはいじめであった。関西にいた間、私は自殺を考えるほどのいじめを受けていた。なので関西の暮らしは私にとって黒歴史でしかなかったのである。私にとっては苦い記憶が真空パッケージされて出てきたようなものであった。あの凄惨な学校生活の記憶をタイムカプセルにして現れたような男の人格の登場。なので腫物を扱うような形でナカには接した。そうした行為が実を結んだのか最後にはナカも「人生捨てたもんやないなあ」と星空を見上げていた。何しろ古い記録を無理やりひっぱりだしているので、話の展開の構成には苦労させられる。ハルヒとの平和で明るい生活に慣れた今の状態からするとこの初期のカオスぶりはまさに天国と地獄位の違いがある。ちなみにダオは救急車で運ばれて以降あったことはない。まあ悪さをする人格ではないので今は安心しているが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る