地球が回ることを辞めたとき、起きているか寝ているかが人々の命運を分けた。
起きていた者には、永久の覚醒を。眠っていたものには、永久の睡眠を。地球が止まったのと同時に、時間も止まる。
主人公が住んでいる町は、夜明け前の町。夜明け前の地点で時が止まった街。永遠に夜明けは訪れない。
ある場所では、夕暮れが。ある場所では、夏の終わりが。それらがずっと、続いている。そこで歩みを止まっている。
主人公は永久の睡眠に囚われた妻とともに住み続ける。かつて妻が主人公との居住の地に選んだこの町に。
男は今日もキーボードに向かい、小説を綴る。
回ることを辞めた地球。そこで暮らす人々。眠ることのできない人々と起きることのできない人々に、突如二分されてしまった人々。そんな世界での人々の営みにはしんみりしたものが感じられました。