第9話第九章 失われた羅刹斬

 飛音はライトを雄一郎に渡すと、風の吹く中を猿神山の奥へ向かって走り出した。雨が風にあおられて、飛音の顔に吹きつける。羅刹斬に神力が蘇ったのなら、早目に幽冥鬼を始末しておく必要がある。本当に羅刹斬に幽冥鬼を殺す力があるのか確認もしておかないといけないし、母親と星野さんの仇討ちもしたい。 

 雨の中を、ライトを持った雄一郎も待たずに、飛音はぬかるむ猿神山を走った。暗闇で何度か足をとられそうになったが、構わず走った。やがて前方に薄赤色の光が見えた。幽冥鬼だ。幽冥鬼は山の木を押し分けて進むので歩くのに時間がかかり、まだねぐらに着いてなかったのだ。猿神山は木が多いので、幽冥鬼も歩くのに手間取るようだ。猿神山は台形で、この辺りは平坦になっている。

 飛音は幽冥鬼の居る場所まで一気に走って追いついた。幽冥鬼は警戒すらしていない。飛音は白く輝く羅刹斬を振り上げると、幽冥鬼の毛に覆われたふくらはぎ目がけて突き刺した。

 羅刹斬は手応えと共に幽冥鬼の皮膚を貫いた。あれほど鋼の鎧のようだった幽冥鬼の皮膚、羅刹斬を弾き返すほど硬かった幽冥鬼の皮膚が、白く輝く羅刹斬の前では多少硬いとはいえ、人間の皮膚をナイフで刺すように刺す事ができた。

 ぐぉぉぉお。耳をつんざく幽冥鬼の悲鳴だ。幽冥鬼はこちらに振り向くなり、右手でパンチを繰り出してきた。巨体の割に俊敏な動きだ。ただ俊敏さでは飛音も負けてはいない。羅刹斬を握ったまま、とっさに避けると、幽冥鬼の指に羅刹斬で斬りかかった。

 幽冥鬼の右の親指が羅刹斬によって、スパッと斬れて転がった。斬れた幽冥鬼の親指は、ぼおっと燃えるように光って、塵になって風に吹き飛ばされて消えた。幽冥鬼はさらにけたたましく吠えた。飛音は素早く木の陰に隠れて、幽冥鬼の動きに注意を払った。雨で視界は悪い。一瞬の不注意が命取りになる場面だ。しかし幽冥鬼は薄赤色に光っているので、暗闇とはいえ、見失うことなない。

 幽冥鬼は怒り狂ったように飛音が身を隠す木を引っこ抜くと、飛音目がけて左の拳を叩きつけた。幽冥鬼の拳が地面にめり込み、地が揺れる。飛音は転がるように避けると、さっと起き上がり幽冥鬼の左手首を気合いもろとも斬った。羅刹斬は幽冥鬼の左の手首に刺さった。硬いが構わずぐいっと斬った。幽冥鬼は左腕を引っ込めようとしたので、そのまま羅刹斬で幽冥鬼の手首から指までを一直線に斬った。

 幽冥鬼は手を斬られたが、血を流してはいない。幽冥鬼には血は無いのかもしれない。それでも幽冥鬼が斬られた方の左腕を、もう片方の手で押さえて、体を屈めて唸っているのを見ると、痛みは感じているようだ。風が強く吹く。

 幽冥鬼は後ろを向いて逃げるように立ち去ろうとした。逃してたまるか。母親の仇。星野さんの仇。そして幽冥鬼に喰われた人々の仇。飛音は幽冥鬼を追いかけると、背後から気合いもろとも、幽冥鬼の丸太の様な右足ふくらはぎを斬った。硬いがそのまま幽冥鬼の横を走りながら、羅刹斬を幽冥鬼の右足深くに刺し入れた。

 幽冥鬼は大声を上げると、立ち止まって毛むくじゃらの右足で飛音の方を蹴ろうとした。飛音はとっさに羅刹斬を幽冥鬼の右足から抜こうとしたが、深く突き刺さっているせいで簡単には抜けない。仕方なく飛音は羅刹斬から手を離し、羅刹斬を幽冥鬼の右足に残したまま、木の陰に身を隠した。

 そうだ。このまま羅刹斬を幽冥鬼の右足に残したままにして、少しずつ幽冥鬼の右足を斬っていこう。上手く行けば幽冥鬼の右足を切断できる。そうすれば幽冥鬼の動きを封じる事ができて、有利に戦える。風はますます強くなり、飛音に雨の粒を吹きつける。

 のんびりしていると、幽冥鬼が羅刹斬を抜いてしまうかもしれないので、飛音はちょこまかと幽冥鬼の足の周りをうろつき、隙を見ては突き刺したままの羅刹斬で幽冥鬼の右足を少しずつ少しずつ斬った。時々、幽冥鬼がパンチを繰り出してくる。飛音は俊敏に幽冥鬼のパンチをかわし、時には木陰でチャンスを窺いつつ、幽冥鬼の右足を斬っていった。

 不思議なことに幽冥鬼は、羅刹斬を手で抜こうとはしない。何度目かに幽冥鬼の右足に近づいた時に気づいたが、羅刹斬の周りの幽冥鬼の右足が爛れた様になっている。もしかしたら羅刹斬には、幽冥鬼の皮膚を腐食させる作用があるのかもしれない。それで幽冥鬼は羅刹斬を手で触れられないのかもしれない。

 そうだとしたら飛音には好都合だ。羅刹斬は突き刺しているだけで、幽冥鬼にダメージを与えている。羅刹斬が幽冥鬼のあの硬い皮膚を斬り裂くのも、腐食させているせいかもしれない。

 幽冥鬼は立ち止まって、飛音目がけて滅茶苦茶にパンチを繰り出してきた。これでは幽冥鬼に近づけない。飛音は仕方なく木の陰に隠れた。すると不意に幽冥鬼は、木をめりめりと倒して、走って逃げ出した。これでは羅刹斬ごと幽冥鬼に逃げられる。飛音は焦った。が、幽冥鬼は速い。

 幽冥鬼は木をなぎ倒しながら、どんどん遠くなる。このままでは羅刹斬が失われる。と思った瞬間、幽冥鬼ががくりと右膝を地面につき、立ち止まった。飛音は雨で地面が滑りやすいなか、必死に駆けて幽冥鬼に追いついた。風が飛音の髪の毛をなびかせる。

 幽冥鬼は両手で木を掴み、起き上がったところだった。幽冥鬼の右足は大きく爛れ千切れそうだ。飛音が少しずつ羅刹斬で幽冥鬼の右足を斬った上に、羅刹斬が突き刺さっているだけでも幽冥鬼の皮膚を腐食させているので、もう幽冥鬼の右足は限界のようだ。飛音は羅刹斬に手をかけると、一気に幽冥鬼の右足を斬り落とした。幽冥鬼は咆哮した。幽冥鬼の丸太の様に太い、毛むくじゃらの足はぼうっと燃えるように光を放って、塵となって風に吹かれて消えた。

 幽冥鬼はふくらはぎから下の右足を失い、前のめりに地面に倒れ、絶叫した。幽冥鬼の倒れた衝撃で、地震のように地面が揺れた。幽冥鬼は転げまわったが、木が邪魔になり、あまり動けないようだ。光を失っていた頃の羅刹斬では幽冥鬼に歯がたたなかったが、神力が蘇った羅刹斬は幽冥鬼を斬る事ができる。

「飛音。幽冥鬼の角を斬り落とすんだ。そうすれば幽冥鬼は死ぬ。昨日、碓井の家に伝わる鬼退治の古文書を読んでいたら、鬼にとどめを刺す時は角を斬るべしと書いてあった」

 いつの間にか、伯父の雄一郎が近くに来て、ライトで足もとを照らしてくれていた。雨で、雄一郎が近づいて来ていたことに気づかなかった。相変わらず風も強い。飛音は雨でぬかるむ地面に足を取られつつも、走って幽冥鬼の頭の部分に向かった。幽冥鬼は倒れたまま頭の上で、両腕を振り回している。幽冥鬼の拳の直撃を受けたら、即死の可能性もある。飛音は慎重に間合いをつめた。

 幽冥鬼が頭の上で腕を振り回している以上、幽冥鬼の角に近づく事はできない。幽冥鬼もそれが目的で両腕を振り回しているのだろう。幽冥鬼が両腕を振り回すのをやめて、木に掴まって立ち上がったら面倒だ。幽冥鬼が上半身を起こすだけでも、到底、角には届かなくなるからだ。

 いくら羅刹斬が有るといっても、幽冥鬼と戦うことは死と隣合わせだ。油断すれば、幽冥鬼の拳を喰らって死ぬ。なんとか幽冥鬼の角を斬らないといけないが、幽冥鬼がぶんぶんと両腕を振り回すので、間合いをとりにくい。

 やはり角より先に幽冥鬼の腕を斬らないとダメか。しかし幽冥鬼の腕を斬っても、幽冥鬼が上半身を起こすと角に届かなくなる。幽冥鬼が頭の上で手を振り回している間に、飛音は幽冥鬼の赤銅色の腹に羅刹斬を突き立てて斬った。幽冥鬼の腹筋は硬いが、それでも斬った。

 幽冥鬼は雷鳴のような声をあげた。腹を斬れば幽冥鬼は、頭の上で手を振り回すのをやめるだろうと思った。しかし幽冥鬼は頭の上で腕を振るのをやめない。角が弱点だからだ。

 仕方なく飛音は幽冥鬼の腹を羅刹斬で斬れるだけ斬ったが、幽冥鬼の腹など太すぎて、いくら羅刹斬でも斬り離せるものではない。だが腹を斬られた幽冥鬼はさすがに腕を振り回すのをやめて、飛音を掴もうと手を伸ばしてきた。飛音は羅刹斬を幽冥鬼の腹から引っこ抜いて木陰に隠れた。

 羅刹斬が幽冥鬼の腹からすんなり抜けてくれてよかった。下手をすれば幽冥鬼の腹筋に挟まれて、羅刹斬が抜けないところだった。幽冥鬼は腕を振る方に集中して、腹筋には力を入れてなかったのだろう。飛音は今のうちにと、幽冥鬼の頭の方に移動した。しかし幽冥鬼はまたしても頭の上で腕を振り回し始めた。やはり幽冥鬼の腕を斬らないとダメだ。

 羅刹斬は突き刺すだけでも幽冥鬼にダメージを与える事がわかったので、まずは羅刹斬を幽冥鬼の腕に突き立てよう。それにしても幽冥鬼の腕の振りが速いので、上手く羅刹斬を刺さないと、刺す前に羅刹斬が弾き飛ばされてしまう可能性がある。

 飛音は雨と風の中、じっと機会を窺った。ときどき風で雨が目に入る。伯父の雄一郎はライトでこちらを照らしてくれているが、幽冥鬼自体も薄赤色に光っているので見失う事はない。風が強く吹いた。

 かなりしてから、ようやく幽冥鬼は腕を振るのをやめて、木に掴まって立ち上がろうとした。この一瞬を待っていたのだ。飛音は木の陰に身を隠しつつ幽冥鬼に近づいて、素早く幽冥鬼の右肘に羅刹斬を突き刺した。幽冥鬼は吠えて、また地面に崩れた。今度は仰向けだ。幽冥鬼の倒れた衝撃で地面が揺れた。飛音は少し幽冥鬼から距離をとった。

 これでじっとしていても、勝手に羅刹斬が幽冥鬼の肘を腐食させてくれる。おそらく羅刹斬は柄の部分にも神力があって、幽冥鬼は触れないのだろう。そうでなければ、とっくに幽冥鬼は羅刹斬を引き抜いているはずだ。

 しかし幽冥鬼の肘は、人間の胴ぐらい太い。羅刹斬が自然に幽冥鬼の肘を斬り離すのを待っていたら、いつまで時間がかかるかわからない。足のとき同様、少しずつでも羅刹斬を動かして、幽冥鬼の肘を斬ったほうがいい。

 飛音が徐々に幽冥鬼に近づいて、慎重に幽冥鬼の右肘に突き刺したままにしてある羅刹斬の柄を握ろうとした時、また幽冥鬼が腕を振り出した。危なかった。幽冥鬼の腕の直撃を受けたら、下手をしたら即死だ。飛音はまたしても木陰に身を隠し、チャンスを待った。こうしている間にも、羅刹斬が幽冥鬼にダメージを与えてくれていると思うと心強い。焦る必要はない。雨と風が、徐々に飛音の体温を奪うが、季節は夏なのでまだ平気だ。

 飛音はしばらく待ってから、行動を開始した。飛音は木陰に巧みに身を隠しつつ、幽冥鬼の胸の辺りに移動した。そうして幽冥鬼の筋骨隆々の胸の前に進み出て、幽冥鬼の胸の右手側を足蹴にした。幽冥鬼は倒れたまま、その血走った大きな目でぎょろりと飛音を見ると、とっさに右手で飛音を掴もうとした。

 その瞬間、飛音は木陰に入り、隙を突いて幽冥鬼の右肘に刺さっている羅刹斬の柄を握って、力任せに幽冥鬼の右肘を斬った。手応えがあった。しかし深追いはせず、飛音はまた木陰に身を隠した。

 幽冥鬼は飛音の隠れている木を右手で掴んで引っこ抜こうとした。だが怪力のはずの幽冥鬼が、木を抜くのに手間取っている。かなり羅刹斬が右肘に食い込んでいるのだろう。幽冥鬼は右手を下にして横向きに起き、左手を伸ばしてきた。

 飛音は幽冥鬼の左手が来るより早く木陰から身を出すと、幽冥鬼の右肘に深く刺さっている羅刹斬で、幽冥鬼の右肘を一気に斬った。羅刹斬を幽冥鬼の右肘に突き刺してからだいぶ経っている。羅刹斬がかなり幽冥鬼の右肘を腐食させてくれていたのだろう。意外にあっさりと幽冥鬼の右肘は斬れて、そこから先の幽冥鬼の腕はぼうっと光って塵になり、風に吹き飛ばされて消えた。

 幽冥鬼は大声で叫び空気が振動した。幽冥鬼は左手で木を掴んだ。さっき右手で抜けなかった木を左手で抜こうとしているのだろう。飛音は羅刹斬をそのまま握って、伸びてきた幽冥鬼の左腕の上腕二頭筋の辺りに突き刺してから、横っ跳びに飛んで幽冥鬼から逃げた。幽冥鬼は唸りながら、さっきまで飛音が身を隠していた木を左手で引き抜いた。そしてそのまま、幽冥鬼はまた仰向けになった。風が、時折激しく吹く。

 これで幽冥鬼の左腕に刺さったままの羅刹斬が、幽冥鬼の左腕を腐食させる。今度も徐々に斬っていこう。飛音はまず、幽冥鬼の左手側に移動することにした。雨でぬかるむ地面を踏みしめながら、木に身を隠しつつ、少しずつ移動して幽冥鬼の左手側に来た。

 羅刹斬は幽冥鬼の左腕上腕二頭筋の外側、つまり飛音の側に刺さっている。幽冥鬼は右腕の肘から先を失ったせいか、おとなしくなっている。チャンスだ。飛音は木陰から出ると羅刹斬の柄を握って、ぐいっと幽冥鬼の左腕を斬った。幽冥鬼の筋肉が硬くて一気には斬れないが、手応えはあった。

 幽冥鬼が大音声で叫んだ。飛音は素早く木の陰に隠れた。こうやって、隠れては斬り、斬っては隠れるのが上策だ。場所が木の多い山でよかった。それに雨が降っているので、視界が悪くなっているのも幸いしているだろう。巨体で薄赤色に光っている幽冥鬼に比べ、人間は小さくて雨だと見えにくいと思う。

 飛音は木陰から出ては、羅刹斬で少しずつ幽冥鬼の左腕を斬り、また隠れるを繰り返した。幽冥鬼は片足なので、簡単には起き上がれない。上半身を起こす事はできるはずだが、今のところそれはしていない。もしかしたら飛音が羅刹斬で腹を斬ったので、痛くて上半身を起こせないのかもしれない。

 不意に幽冥鬼は怒りに満ちた声を発すると、いきなり左腕を振り回して飛音の近くの木々をなぎ倒した。木は重なるように折れて、小さな山の様になった。飛音も木にぶつかって吹っ飛ばされた。油断していた。

 飛音は吹っ飛ばされた衝撃で、後方の木にぶつかり倒れた。幸い頭部は打たなかったが、全身が痛い。相当な打撲だ。あらためて幽冥鬼の腕力の凄さを知った。羅刹斬で相当ダメージを受けているはずなのに、この腕力だ。

「飛音、大丈夫か? 無理をするな」

 伯父の雄一郎が慌てて近づいて来た。雄一郎は手にしたライトで飛音を照らし、外傷は無いと言った。しかし、しばらくはこのまま横になっていたほうがいい。飛音は雨に濡れながら横たわった。相変わらず風もある。

 どれぐらい経っただろうか。飛音が見ると、幽冥鬼が先程なぎ倒した木の山に左腕をかけて、苦しそうに上半身を起こしている。このまま逃げられたら困る。早くとどめを刺さないと。もし幽冥鬼に驚異的な再生能力でもあったら、いままでの苦労が無駄になる。それだけは避けたい。体が痛いなどと言っている場合ではない。飛音はどこにそんな元気があったのかと思うほど力が湧いてきた。幽冥鬼は母親と星野さんの仇だし、このままではさらに村人が犠牲になる。そう思うと、ますます力が湧いた。

 飛音は走ってなぎ倒された木の山に登った。目の前に幽冥鬼の左腕がある。なんと幽冥鬼の左腕はかなり斬れていて、あとひと息で斬れる。飛音がのびている間に、羅刹斬によって幽冥鬼の左腕はそうとう侵食されていたようだ。幽冥鬼も切れかかった左腕ではなく、左肩で木の山にもたれている感じだ。

 飛音は木の山の上から手を伸ばし羅刹斬の柄を握ると、そのまま木の山から飛び降りて、その力で幽冥鬼の左腕を斬った。幽冥鬼はぎゃーっと悲鳴のような奇声を出した。ついに幽冥鬼の左腕は斬れた。幽冥鬼の左腕は、ぼうっと光を放って塵になって風に吹かれて消えた。

 幽冥鬼は木の山にもたれたままだ。飛音は羅刹斬をぎゅっと握り締めて、またなぎ倒された木の山に登った。そこからジャンプして幽冥鬼の長い縮れた髪の毛に捕まり、そのまま幽冥鬼の頭の上に移動した。幽冥鬼の髪の毛は、風で揺れている。

 幽冥鬼の角は二本。その左の角の根本に羅刹斬を突き刺した。幽冥鬼は断末魔の叫びのような物凄い声を出した。しかし幽冥鬼は両手とも無いので、飛音を引き離す事は出来ない。

 幽冥鬼は頭を激しく振ったが、飛音は幽冥鬼の髪の毛に必死にしがみつき、幽冥鬼の左角を斬った。

 幽冥鬼の足や腕と比べると、幽冥鬼の角は遥かに細い。むろん牛の角などより太いのだが、羅刹斬の神力を持ってすれば、幽冥鬼の足や腕を斬るのと比較して簡単に斬れそうだ。幽冥鬼は激しく頭を振るものの、ここまで来てやすやすと振り落とされる飛音ではない。

 やがて幽冥鬼の左の角が斬れた。角は地面に落ちたが、塵になって消えたりしなかった。幽冥鬼は角だけが実体なのだろうか。幽冥鬼は烈しく吠えた。飛音は幽冥鬼の髪の毛をしっかり掴んだまま、今度は幽冥鬼の右の角の根本に羅刹斬を突き刺した。

 幽冥鬼は不意になぎ倒された木の山に頭突きをした。飛音を潰そうとしたのだろう。しかし皮肉にも幽冥鬼の角が木の山と飛音との間に隙間をつくってくれ、飛音は大丈夫だった。幽冥鬼はしきりに右腕を頭に伸ばすが、肘までしか無いので頭に届かない。

 幽冥鬼は首も凄く太いので、首を傾けるのも不得手のようだ。幽冥鬼が首を大きく右に傾ければ、肘までしか無い幽冥鬼の右腕でも飛音を払い落とせるかもしれないのだが。

 飛音は羅刹斬で幽冥鬼の右角をせっせと斬った。あと少しだ。その時、幽冥鬼は急に前転をした。今度も幽冥鬼の角が地面と隙間をつくってくれて、飛音は潰されずに済んだが、うっかり羅刹斬から手を離してしまい、さらに幽冥鬼の髪の毛からも振り落とされ、地面に降りてしまった。もう少しなのに。羅刹斬は幽冥鬼の角に刺さったままだ。

 幽冥鬼はうつ伏せになると、這って逃げ出した。幽冥鬼も必死のようだ。飛音は体勢を立て直すと幽冥鬼を追った。幽冥鬼は手も足も負傷しているので這うのもやっとみたいだ。さらに木の根っ子などが地中だけでなく地面にまで張っているので、幽冥鬼はなかなか移動できないようだ。

 飛音は木の根っ子に注意しながら走り幽冥鬼に近づくと、幽冥鬼の背中に乗って頭部にまわった。幽冥鬼の右の角はほとんど落ちかかっていた。羅刹斬の神力が幽冥鬼の角を腐食させているのだ。

 飛音はバランスをとりながらゆっくり幽冥鬼の角まで歩くと、羅刹斬に手をかけ、一気に幽冥鬼の右の角を斬り落とした。幽冥鬼は聞いたこともない悲鳴を上げた。幽冥鬼の最期だ。角がぽとりと落ちると、幽冥鬼の体は一瞬ぼおっと強く輝いた後で、その体の薄赤色の光を失い、塵になり、風に吹かれて消えた。後には角だけが残った。幽冥鬼の死とシンクロするように、強い風は止んだ。

 あの恐るべき幽冥鬼も、神力の戻った白く光る羅刹斬によって始末することが出来た。母親の仇と星野さんの仇討ちだ。幽冥鬼に喰われた村人の無念も晴らした。しかしこの幽冥鬼も元はといえば間引きの穢れ。人間によって作り出された穢れなのだ。そう思うと飛音は雨の中、手を合わさずにはいられなかった。

 其の途端、飛音に目がけて木が飛んできた。木は飛音の体をかすめ、飛音の腕を直撃した。その衝撃で飛音の手から羅刹斬は飛んで行き、前方の木の上部に羅刹斬が突き刺さった。木の上部なので手が届かない。羅刹斬が取れない。羅刹斬が失われた事になる。

 見ると、少し離れた場所に薄赤色にうっすらと光った幽冥鬼が居る。雨で視界が悪く気づかなかった。二匹目の幽冥鬼だ。幽冥鬼がもう一匹居ることを忘れていた。

 幽冥鬼は、うぉぉぉ~と叫びながら、木を何本もへし折って飛音のところへ走ってきた。羅刹斬が手元に無い以上、幽冥鬼と戦うことはできない。喰われるかもしれない。そう思うと飛音の全身から冷や汗が吹き出し、鳥肌が立ち、体が震えた。

 逃げるしかない。飛音は木に身を隠しつつ、ジグザグに走って逃げた。木に直撃された腕が痛み痺れているが、いまはそんな事を気にしている場合ではない。命の危険が迫っている。飛音は羅刹斬を持たない自分が、いかに非力かを思い知った。

 夜で雨が降っているせいで月明かりも無い。ライトは伯父の雄一郎が持っているが、雄一郎も逃げているので、飛音の前は真っ暗だ。こんな時のために飛音は小型のペンライトを持ってきていた。小型のペンライトを点ける。小さな光だが、なにも無いよりはマシだ。

 幽冥鬼が木を倒しながら迫って来る。飛音は雨でぬかるんだ地面に足をとられ滑った。ダメだ。追いつかれる。飛音はとっさにペンライトを消した。暗闇に紛れるためだ。

 その時、向こうでライトの光が見えた。雄一郎の叫び声がする。どうやら雄一郎は幽冥鬼を自分に引きつけて、飛音を守ろうとしているようだ。幽冥鬼は雄一郎の声を聞いて、そちらに向きを変えた。

 幽冥鬼はめりめりと木を倒しながら、雄一郎の方に進む。この幽冥鬼は空腹なのかもしれない。さっき倒した幽冥鬼は満腹のようで、動きが緩慢な部分もあった。この幽冥鬼は喰うために必死なのだろう。

 それにしてもこの幽冥鬼は、やたら木をなぎ倒して進む。飛音は閃いた。羅刹斬の突き刺さった木をこの幽冥鬼に倒させれば、羅刹斬を取り戻すことができる。飛音はもう一度、ペンライトを点けた。そして飛音は暗闇の中を小型のペンライトの小さな明かりだけで、勘を頼りに先ほどの羅刹斬が飛ばされた場所に戻った。

 暗くて何も見えない。羅刹斬よどこだ。そう念じたとたん、少し離れた木の上の方が、白く輝き出した。羅刹斬の光で間違いない。羅刹斬は飛音の念に応じて光るのかもしれない。ここまで幽冥鬼を誘導しよう。

「お~い、こっちだ~。伯父さん、幽冥鬼をこっちに連れてきて~」

 飛音は叫んだ。幽冥鬼に人間の言葉はわからないだろう。やがてライトの明かりがこちらに向かって移動してくるのが見えた。雄一郎も飛音の考えを察してくれたのだろう。ライトの明かりを追って幽冥鬼が移動して来る。幽冥鬼は薄赤色に光っているので、暗闇でもわかりやすい。

 幽冥鬼は木をぼきぼき倒す音をさせながらこちらに向かって来る。雄一郎が木の間をジグザグに走っているのがライトの明かりでわかる。山の木が幽冥鬼の邪魔になって幽冥鬼の動きを遅くし、人間はジグザグに走って木に隠れることで身を守れる。場所が山でよかった。やがて雄一郎がやって来た。幽冥鬼もすぐ後ろに迫っている。

 飛音は素早く雄一郎に計画を説明した。幽冥鬼に羅刹斬が刺さっている木を倒させ、雄一郎が幽冥鬼を誘導している間に、飛音が木から羅刹斬を抜く。まずは飛音は幽冥鬼に見つからないように遠くに離れた。

 飛音が木陰に身を隠して見守っていると、雄一郎は無事に羅刹斬の刺さった木を幽冥鬼に倒させ、遠くへ行った。これでまた幽冥鬼と戦える。そのとたん、雨があがった。しかし地面はぬかるんだままだ。慎重に歩かないと。

 飛音は倒れた木のところに行って、羅刹斬を探した。羅刹斬は白く輝くので見つけやすい。飛音は羅刹斬を見つけると、羅刹斬の柄を手で握って引いた。羅刹斬は深く刺さっているようで、なかなか抜けない。木を足で踏んで、羅刹斬を小刻みに前後に動かして、ようやく羅刹斬を抜いた。

 羅刹斬は神秘的に光っている。羅刹斬を失っていた間は凄く不安で、死の恐怖を感じたが、羅刹斬を手にすると逆に勇気が湧いてきた。羅刹斬はますます輝きを放った。

「お~い。羅刹斬は戻ったか? 俺に考えがある。風下に行って木に登れ。登ったら明かりを振って合図しろ。俺が幽冥鬼を誘導するから、今度は一気に幽冥鬼の角を狙え。さっきのやり方では時間がかかり過ぎる。冥帝鬼が出るのは明日の晩だ。いま疲労し過ぎて、明日に差し支えてはまずい。幽冥鬼を早く始末して、なるべく体力を温存するんだ」

 向こうから雄一郎が大声で叫んできた。飛音は「わかった」と大声で返事をすると、さっそく風下へと走った。そして適当な木の前に立つと、羅刹斬を口にくわえて木に登った。木登りは得意だった。伯父の雄一郎も、それを知っていての作戦だ。

 木に登ると、急に霧が出てきた。狭霧嶽村では霧は珍しくない。だが霧が濃くなると、雄一郎のライトの明かりも見えにくくなるし、飛音のペンライトの明かりも雄一郎から見えにくくなるだろうし、幽冥鬼も薄赤色に光っているとはいえ、やはり見えにくくなる。急がなければ。

 飛音は叫びながらペンライトを振った。風下で匂いで気づかれないようにし、身を潜める。遠くで雄一郎がライトを振るのが見えた。霧はまだ濃くない。

 やがてジグザグにライトの明かりがこちらに向かって来て、幽冥鬼も後を追う。木がなぎ倒される音がする。もし伯父さんが幽冥鬼に追いつかれたら、最悪の事態になる。猿神山のあちこちには、木の根も出ている。伯父さんが木の根につまづかないといいが。この辺りは山でも平坦なので走りやすいはずだ。とにかく早く幽冥鬼を始末しないと。

 作戦通り幽冥鬼が来た。霧はだんだん濃くなるが、まだ幽冥鬼の体の光は見える。飛音は羅刹斬を口にくわえると、タイミングをはかって幽冥鬼の頭に飛び降りた。幽冥鬼は走っているとはいえ、木を倒す時に一瞬止まるので、上手くタイミングさえとれば、頭に飛び降りることはできる。バランスを崩しても、幽冥鬼の髪の毛にしがみつけば、頭から落ちることは無い。

 飛音は羅刹斬を両手でぎゅっと握り、体重をかけて幽冥鬼の角に目がけて突き刺した。成功だ。雄一郎が上手に幽冥鬼を、飛音の潜む木の下に導いてくれたお陰だ。

 幽冥鬼は奇声を発した。鼓膜が痛い。飛音は幽冥鬼の頭の上で足を滑らせたが、とっさに幽冥鬼の長い縮れた髪の毛を掴み、羅刹斬を突き刺したまま、木に飛び移った。幽冥鬼は羅刹斬を手で触れることは出来ないようだが、飛音を捕まえることは出来る。長居は無用だ。羅刹斬は刺さっているだけで効果を発揮する。 

 幽冥鬼は足を止めたが、すぐに雄一郎が近くまで来て挑発するので、雄一郎を追いかけて行った。飛音は急いで木を降りると、さらに別の木を探した。幽冥鬼が木をなぎ倒すので、なるべく木の多い場所に移動しないと、雄一郎が身を隠せなくなる。それは死を意味した。雄一郎と飛音を守っているのは、山の木だ。猿神山は鬱蒼と木々が生い茂る山なので木には困らないが、それでも一度幽冥鬼が通った場所は木がなぎ倒されるから、別のところに移動しないといけない。霧はゆっくりと濃くなっている。

 飛音は幽冥鬼から風下になる場所を選び、木に登った。猿神山は木が多いので助かる。飛音は木の枝の上でお~いと叫んでペンライトを振った。少ししてライトの明かりがぐるぐると回った。やがてライトの明かりがジグザグにこちらに向かって移動してくる。

 幽冥鬼の薄赤色の光が近づいてくる。霧は濃くなっているが、まだ見える。近くで木のなぎ倒される音がする。幽冥鬼が来る。飛音はタイミングをはかって幽冥鬼の頭に飛び乗り、素早く羅刹斬を掴むと幽冥鬼の角を斬った。

 幽冥鬼の角は羅刹斬によってかなり侵食されていたのだろう。飛音がぐいっと渾身の力で斬ると、幽冥鬼の角が落ちた。幽冥鬼は立ち止まり咆哮した。その一瞬の隙を逃さず、飛音はもう片方の幽冥鬼の角に羅刹斬を突き刺し、すぐに木に飛び移った。

 雄一郎が何度も幽冥鬼を挑発する声がする。かなり霧が濃くなり、しかも夜なので雄一郎の姿が見えにくい。雨が上がったとはいえ、月は雲に隠れているせいで、月明かりも無い。

 幽冥鬼はやはり空腹なのだろう。叫びながら雄一郎を追いかけて行った。飛音は木を降りて移動した。霧でペンライトでも前が見えなくなっている。手探りで進み、風下の適当な木に登った。ペンライトを振るが、雄一郎のライトの明かりが見えない。

 しばらくして雄一郎の大声が聞こえた。明かりが霧で見えないとのことだ。やむを得ず飛音も大声で場所を知らせた。霧が濃い。近くで木の倒れる音がする。幽冥鬼が近づいているが霧で見えない。突如、前方に幽冥鬼の薄赤色の光が見えた。と思った次の瞬間には、飛音の登っている木も倒された。

 木は倒れたが、ゆっくりと倒れたので飛音は地面に叩きつけられなくて済んだ。この霧では幽冥鬼が見えない。幽冥鬼が見えないのでは、幽冥鬼の頭に飛び乗り角を斬ることは無理だ。あと少しなのに作戦は失敗だ。

 遠くの方で木の倒れる音がする。伯父さんは大丈夫だろうか。この猿神山は太古から人が入らず、鬱蒼と木々が生い茂っている。その木々が伯父さんを守ってくれるといいのだが。相変わらず地面は、先ほどの雨のせいでぬかるんでいるので、伯父さんが足を滑らせないか心配だ。

 羅刹斬が無くては何も出来ない。しかも霧で何も見えない。飛音はあてもなく山を彷徨った。木の倒れる音が近づいてくる。飛音は雄一郎に声をかけた。霧で、幽冥鬼の頭に飛び乗る作戦が無理だと伝えた。雄一郎は「逃げろ」と叫びつつ、遠ざかって行ったようだ。

 近くで木の倒れる音がして、次の瞬間には飛音の体はぎゅっと握られていた。霧の中、幽冥鬼の薄赤色の光がぼやけて見えた。幽冥鬼に捕まったようだ。飛音は恐怖で体が硬直した。叫び声も出ない。幽冥鬼の口が間近に見えた。ついに喰われる。飛音は幽冥鬼の口に入れられたのがわかった。後はその牙で噛み砕かれるだけだ。飛音は目を閉じた。

 一瞬が無限に感じられた。とうとう死ぬのだ。しかも安らかな死ではない。おぞましい幽冥鬼に喰い殺されるのだ。いままで幽冥鬼に喰われた人も、こうやって死んだのだな。

 飛音の体は何故か地面に落下した。受け身は取ったが、したたかに体を地面で打った。その飛音の横に幽冥鬼が倒れてきた。地響きがした。幽冥鬼が一瞬ぼおっと強く光り、やがてその体の薄赤色の光が消えた。霧で視界が悪いが、白い光が見える。紛れも無く羅刹斬の輝きだった。その羅刹斬の光に照らされて、幽冥鬼の角が落ちているのが霧の中でも見える。

 羅刹斬が幽冥鬼の角に刺さったまま、幽冥鬼の角を侵食し、角が落ちたのだ。幽冥鬼は塵になって消えたのだろう。この幽冥鬼は食欲のため逃げる事をせず角を落とされたのだが、人を喰うために生まれてきた幽冥鬼にとっては、食欲のままに人間を追いかけたのは当たり前のことだったのかもしれない。これで二匹の幽冥鬼を退治した。幽冥鬼は二匹のはずだ。幽冥鬼はいなくなった。飛音は大声で雄一郎を呼んだ。

「伯父さん。明日まで待たずに、このまま鬼人講に突入しよう。明日になって冥帝鬼が出てしまっては困る。冥帝鬼は幽冥鬼より、遥かに強いんでしょ」

「しかし、疲れているだろ。ゆっくりと休んで、明日にしたらどうだ。それに鬼人講に侵入する方法も考えないと」

「お母さんが生け贄にされた鬼儺式の夜、幽冥鬼が鬼人講の裏庭のブロック塀を壊したけど、もしかしたらまだ直してないかもしれない。そうだとしたら、そこから侵入できる」

「だが信者がいるぞ。多勢に無勢だ。いくら羅刹斬を振り回しても、捕まる可能性が高い」

「伯父さん。さっきのカラス女。霧島真知子さんの持ってた猟銃。あれが使えるよ。猟銃で脅せば、信者だって手出しできない。それで講主を羅刹斬で殺す。霧島真知子さんは羅刹斬で佐助のウスゴロの生まれ変わりを殺せば、禊になると言ってた。カラス女は冥帝鬼を出してくれと頼んでいたが、そんな危険な賭けは出来ない。冥帝鬼が出る前に講主を殺そう。すぐに猟銃を取りに戻り、その足で鬼人講に乗り込もう」

 飛音と雄一郎が鬼人講に潜入する相談をしていると、霧の中、がやがやと人の声がした。足音が近づいてくる。もしかして鬼人講の連中か。そう思っていると、飛音はライトで照らされた。

「君たちは、こんな山の中で何をしているんだ」

「お前らは誰だ? 鬼人講か?」

「我々は警察だ。また羆による人食事件があったので、山をパトロールしている。近いうちに猟友会と協力して、山狩りをするんだ。悪いが、近くで刃物で心臓を刺されたような女の死体があったので、調べさせてもらう」

 飛音と雄一郎はライトで照らされながら調べられ、羅刹斬を見られてしまった。

「この少年が、刃渡り五・五センチ以上の短刀を所持しています。銃刀法違反です」

「この短刀は羆から身を守る護身用として所持しているのです」

 雄一郎が慌てて釈明した。

「そもそも羆が出るかもしれないのに、なんで山の中に居るんだ? この短刀は、先ほどの女性の死体の凶器の可能性がある」

「その女性と言うのは、羆に襲われたのではないですか? 羆の爪の跡があったのでは?」

 雄一郎は釈明を続けたが、警察署に連行されることになった。羅刹斬は警官に取り上げられた。凶器かどうかの検査がされるそうだ。

 これでは鬼人講に乗り込んで、講主を羅刹斬で殺す事ができない。冥帝鬼は明日の夜に出現するのに。警察が冥帝鬼出現阻止の最大の障壁になってしまった。

 こうして羅刹斬は警察によって、飛音の元から取り上げられた。羅刹斬は失われてしまったのだ。羅刹斬が無ければ、飛音は無力だ。冥帝鬼が出現してしまっては、やっかいなことになる。冥帝鬼と戦うすべが無いからだ。なんとかしないと。

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