~お前は虎太郎というんだな~ ③
「ぎゃはは!」
「きゃー!」
昼の12時を過ぎる頃。飯田は持ち場のクラスから離れ、外海大学の日下部や生徒にそれぞれ食事を摂るように声をかけた。
外に少し意識をやれば、夏の日差しの眩しさとともに、何匹もの蝉の鳴き声が合唱のようにして聞こえていた。それに気が付かなかったことに驚きを隠せず、飯田は目を細めた。
おかしい、と時間が経てば経つほど謎の胸騒ぎが飯田の心へと襲いかかっていた。日下部を見るたび無性に息子に連絡をしなければという気持ちが増す。
先程から、珍しくも飯田の忙しない行動にアレスは片眉を上げた。
「おいどうしたんだよ、落ち着きないぜ」
「んん、えっ? そう? ま、まぁ。あとは昨日みたいに外海大学の方たちの分も用意してもらってるから。須藤先生、あとはお願いね」
「あ、はい」
「おいちょっと待てよ」
アレスが飯田に声をかけるが、タイミングが悪いのか。そわそわと、飯田は廊下を歩いていったかと思えばふと思い出したように顔を上げてこちらを見たかと思えば苦笑いをして踵を返し、更に急ぎ足で廊下を歩いて行く彼女に聞こえている様子は見られない。
「なんだよ、どいつもこいつも」
腕を組んで深くため息をついたアレスに、どいつもこいつもの言葉の意味を察した麻里は苦笑するのだった。
周りの子どもたちは、「きょうのきゅうしょくなんだろなぁーっ」と、給食の準備のためにいそいそと手を洗ったり、椅子へと座る子どもが見られていた。
「ねぇ! おにーさんはだれとたべるのー?」
「いっしょにたべようよー!」
子どもたちが日下部を取り囲むようにして、手や服を引っ張っていた。
「僕も一緒に食べてもいいの? あっはは、嬉しいなぁ」
嬉しそうな子どもたちの様子を見て、微笑むのは香菜だった。
その視線に気がついた日下部は照れくさそうに頭を掻いて笑う。
「あ……?」
目を細めたアレスに弾かれたように麻里が振り向く。
「どうしたんですか?」
「いや……一瞬だけ……臭ったような……?」
「えっ!?」
「んだよ大きい声出すなって」
アレスは麻里の口に手を当て、眉間にシワを寄せてあたりを見回す。
「ちっ、逃げられたか」
「そうですか……」
「ったく。変な奴だな」と、アレスは腕を組んで舌を打った。
その視線の先の日下部を、捉えたまま。
・・・
久しぶりのリアルタイムあとがきを失礼致します!
もう忘れられてしまったのではないかと、
作者自身もアレスと日下部たちの呼び方とかをですね、おさらいせねばとなっております(^_^;)
ほんっっとうに久しぶりの更新、もし、お一人でもお楽しみいただけたら幸いです。
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