~宣戦布告 やってやろうじゃねぇの~ ②
「風船割り合戦?」
「はい。野河先生チームと百合先生チームと二手に分かれて!」
放課後の園長室にて、園長を前にわくわくした表情である飯田と。困惑した表情で麻里とアレス、野河とそして若菜も同席していた。
「ねぇねぇ、百合先生と野河先生どうして喧嘩しちゃったの」
若菜は麻里の洋服を少し引くと、小さい声で話し出す。
「た、単なる意見のぶつかり合いなんですけどね……。しかもア……百合先生の意見は大体勘違いだし……」
「あ゛?」
アレスに睨まれたため会話を慎む。美人が睨むのも怖い。
飯田はいいアイディアが思いついたとばかりに少し興奮した様子。
「でも、5歳児だけで? 二手に分けてもすぐに終わってしまうんじゃないの?」
園長の意見にごもっともと頷くのは野河。
「時間の無駄にはなりませんか」
鋭い視線を飯田に向けるが、飯田は胸を張って
「対決は……4、5歳児混合で、二手のチームに別れて行いましょう」
「そうねー……。4、5歳時混合チームならまだ人数も、力もいい具合に別れるかもしれないわね」
「はい。あと、合戦用の衣装を保育士だけでも用意したらいいと思います。そしたら、今の“百合先生”も参加できますし、なによりも盛り上がると思います」
園長と飯田はアレスを見つめ、アレスは「なんだよ」と返す。
対して、衣装と聴いて「うげっ」と声を出して手元に口を当てたのは若菜だった。
「なるほどね……。このアイディアの発端がちょっと頂けないところだけど、まぁ……皆盛り上がって楽しめるなら、やってみる価値はありそうね」
園長は口元に手を当てて頷いた。
「そしたら、赤と白の紅白戦として……。赤が野河先生、白が百合先生、若菜先生にしましょう。司会は、麻里先生にお願いするわ」
「赤といったら俺だろ」
「え、そこそういうつっこみ?」
若菜はついアレスに突っ込む。一方麻里は緊張で心臓が飛び上がりそうになった。
「し、司会をですか!?」
「大丈夫よ。そのときはあたしも一緒に居るから。司会もいい経験になるわよ」
「わ……わ、分かりました……!」
飯田から視線を少しずつ逃れると「まったくもう……!」とアレスに思い切り今の気持ちを視線に込めてぶつける。
「俺は赤がいい」
妙に意見を譲らない。
「まぁ、まぁ。百合先生。今は麻里先生と一緒にたんぽぽ組に入ってると思うんだけど、チームワークって大事だから。今日から運動会の日まで、若菜先生と組んでもらいます」
「お?」
「まじ?」
アレスと若菜は顔を見合わせた。麻里は今やたんぽぽ組での居心地は良くなったものの、アレスと少しの間離れて過ごすというのは少しばかり安心するような、寂しいような。そんな気持ちになるのだった。
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