~変貌~ ② 


 アレス、何処行っちゃったんだよ――。


 と信じて今まで戦ってきた。結果は“ユリ”という女性が現れた……。


 仲間は至って“よかった、よかった”の雰囲気になってはいるのだが、ウィルの身体には違和感ばかりが伝わってくる。

 気がつけば、“ユリ”の手を強く握っていた。


「えっとその、手を離していただけませんか?」

「え、わ!? ごめんっ」

「あと……貴方の名は?」

「あ! 俺はウィルだよ。ごめんね、言ってなくて……」


 ウィルは現実に引き戻され、すぐに手を離した。


「あの……ウィル、さん、なんだか胸元が光ってるみたいですけど……」

「ん、え!?」


 百合が指を指した所へとウィルも視線を合わせた。

 するとそこには、確かにウィルの服から紅い光が漏れていた。


「それって……」

「これは、ロケットペンダントだよ。俺と、アレスの写った……。でも、どうして光ってるんだ……?」


 ウィルは服から光るペンダントを取り出す。

 ウィルの掌にはっきりと表したその光りを百合が見た時だった。吸い込まれるように近づいてゆく。

 百合の様子が今までとは変わっていた。百合の瞳の色がそれまでの人間らしくあった色とは違い、紅く染まっている。

 ウィルの瞳にはそうはっきり映り、目を見開いた。


「“アレス”―――」


 百合の唇から解き放たれた名前。


 その場で掻き消えていくものとは明らかに違い、空間に染み込んでいくような、遠くへと染み込んで行ってしまうようなそんな心地よささえも覚えた。


 そして、百合の声は一人の声ではなく二重に聴こえてきた。その声の感覚にはウィルの鼓動が跳ねた。ウィルの探し求めていた、アレスの声も入り混じっていたのだ。


 やがてペンダントの光が鎮まり、瞳の色も人間らしさを取り戻した百合が驚いたように口元に手を当てた。


「あれ……私、今何て……」

「何だったんだろう……。だけど凄く……懐かしかったよ」


 今、ウィルの目の前に存在する女性は一体何者なのか。

 紅く輝いた瞳、そして懐かしいアレスの声が微かではあったがはっきりとウィルの耳へと届いた。




 声は、遥か彼方の空へと響き渡る。


 本来あるべき姿の元へと届くこととなった。


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