第13話 ~変貌~ ①


 闇は、消え去った――。


「俺達……勝ったんだな……!」


「「「「うぉおおーーーー!!!!」」」」


 世の中を自分たちの手で救えた。

 魔王により、破滅と化した俺達の世界。

 景色を見渡してみても、ちゃんと建った民家なんてほぼないのではないかという悲惨な状況だ。


 主人公、剣士であるウィルは仲間達と歓声の声をあげた。


 アレス、これでお前も楽になったか……?

 ウィルは首に下がるロケットペンダントに手を伸ばし、優しく握った。


「ねぇ、ちょっと待って……! あれ、何!?」


 ウィルの仲間であり、幼なじみでもある回復役の女性、チェリーがポニーテールを揺らして空を指差した。

 その声に仲間全員が、空を見た。


 まばゆい光が、一点に集中して集まっていたのだ。


「何……だ?」


 空に集中していた光が、ゆっくりと地に堕ちてゆく。ウィルは引き寄せられるように光りの元へ駆け寄った。

 ウィルが堕ちてきていた光りに近づくと、胸元で止まった。


 あたたかい。なんだろう、このあたたかさ――。


 ウィルが光を手で触れた時だった。

光はどんどん横へ横へと形を作っていく。異様な光景にウィルはのけぞる。


「え……もしかして、人……?」


 その光りの形が次第に人型になり、宙に浮いている状況だとわかる。ウィルは自然と腕を出し、受け止める姿勢をとっていた。

 光りの輝きは、やがて消えてゆく。


「っおっと!!??」


 光が消えた途端に重みを感じ、体制を崩したウィルは転びそうになるも、人を抱えていると分かった以上傷を付けられない。守るように、ウィルは背中から落ちた。


「っっ……!!」


 落ちた際に思わず目を閉じてしまったウィルは、瞳を開く。


「大丈夫……って……!?」


 ウィルが見たのは、黒髪の、瞳が少し紅い事がとても懐かしく感じる、美女であった。ウィルは頬を紅くなるのを抑えられず、目線を泳がせる。


「えっとその、君はアレス……なわけないよな、えっと……。その……君は誰なの?」

「え……私……えぇっ!? ここは、どこ!?」

「ここは魔王の城だけど……」

「え、そんな何それお城、とか!?」


 女性は立ち上がって周りを見渡し、頬を思い切りつねった。


「痛っ! え、痛い……!?」

「あっはは、よく分からないけど……。大丈夫か? とりあえず、俺達と一緒に来ないか」


 ウィルが女性に握手を求め、手を伸ばす。


「そう、ですね、わけがわからなくて……。そうするしかなさそうですね」


 女性はウィルから差し出されたままの手にためらいながらもそっと触れた。


「何かの縁だと思うしさ。それで……君の名前だけでも聴かせてくれると助かるかな」


「あ、そうでしたね……。私の名前は百合ユリ、です」


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