第3部

第8章 神論。






人間の歴史上、


彼らがその能力を

遺憾なく発揮していただろう


そう思えるのは



例えば古代のギリシャ人。



彼らは

よく考え


故に真理に近付く。



彼らが思いえがいた

神話とされるものを


だが

後世の人間は

はたしてどこまで

紐解けるだろうか。



活性された脳は

その身体能力もあげる。



用意された情報を

記憶処理するだけの

後世人には


そこまで自分を

覚醒させることは

到底出来ないのが現状だ。




彼らは


世界を

『平たく円盤状』だと言った。



その中心に

彼らの国はあり


更にその中心に

《デルポイの聖地》、


オリュンポス神山があった。



世界を

東西に分かつ海

《地中海》と、


そしてその先の黒海

《エウクセイノス》。



世界の海は

このどちらかで、


世界の周りをぐるりと

《大洋河》が


世界の西では

南から北へ、


東では

北から南へ流れていた。



けして

氾濫することのない

この河から


すべての海も川も

水をもらっている。





北の地には

《ヒュペルボレオス》と呼ばれる

幸福な民族が住んでいて


高くそびえる山の向こうで

とこしえの春に生きていた。


老いも病も

労役も戦争も知らぬ


幸福の民だという。



だが

山の洞窟からさす

冷たい風が


彼らの国を凍えさせ、


幸福の民のもとへは


陸からも海からも

辿りつけはしない。



世界の南に住む


《アイティオピア》と呼ばれる

徳の高い人々は、


神々と特に親交があった。



西の果ての

《エリュシオンの原》は、


神々に選ばれた者が

死の苦しみから解かれ


永遠の幸福を送る土地である。



神話に記されたこれらは


後世の人間たちから見れば

夢に溢れた幻想だった。





それは

いたしかたないことだ。



人間たちが

地球上の世界地図を

完成させたのは


古代ギリシャのそれより

ずっとずっと後世である。



だから

後世の人間たちは


神話に語られた

古代の人々の思想を


小さなギリシャの国を

そう語るのだと


思わざるを得ない。



――ところが、だ。



  事実


  世界は平たく円盤状で

  氾濫しない2つの海が

  渦を巻いていた。







天の川銀河。



宇宙に数ある銀河の中でも、人類の住む地球・太陽系を含む銀河である。


地上からは帯状の銀漢を見ることが出来る。だが外側からその姿をとらえずして銀河系の形を思い浮かべる術ははたして。




彼らは

遥か宇宙を世界と語り


地上の国は

そのレプリカに過ぎず


氾濫をしない河とは


なかなかに

面白い表現をしたものだ。



古代ギリシャ人は


星の生も

人間の生も


同じ価値を見い出しただろう。



星には

たくさんの生物が

それぞれのドラマを


人体には

たくさんの微生物たちが

やはり同じように

それぞれのドラマを――



規模の違いはあれど

真理は共通。



そして

今や幻想と謡われがちな


神や我々天界のことも


彼ら古代の使徒は

『真実』として

知っていた。



巨人や魔法使いとして


魔界の住人たちをも

そこに記していたのだった。




それはまだ

人間界と天界と魔界が


今ほどに

階級が大きく

離れていなかった


古代という時の話。








                              神 論 。





混沌。


そう呼ばれるものの存在は

よく知られる、




だが


まるで理解には及ばない。



神話の神々でさえ

それを笑うほどに

理解はしていなかったようだ。



すべての素であり

すべての源である


ありとあらゆる

始まりの場所であり

その姿であり


それは状態であり



――神である。




人間たちが

『元素』と呼ぶ


それらが溢れる混沌は


だが

まだ人間が知らない

幾多のものを秘めている。



感知も理解も出来ないそれを

『ダークマター』とし、


認識する者は

まだ徳が高い。





世界の創世――


それはカオスという神が

意志に目覚めたことにはじまる。






神の御業で

やがて空間『宇宙』が作られ


その中に

彼らの世界、


『銀河』が形作られた。



いや、

作られたのではない。



カオスという神が

その姿を変えたのだ。



全は神カオスであり、


一はそれぞれ、


世界や時間や

天界や魔界や人間界、

人や動物、植物など


『ありとあらゆるもの』に

分かれていっただけのこと。



階級による能力に

差があろうとも


我々は

すべて神の子であり


その一部分にすぎないのだ。




故に

神に最も近いとされる


大天使は言うのだ。



「私の魂も、地上の虫の魂もその重さは等しく、偉大にして無価値なのだ」




『命』というものは

『時間』を与えられた

その『期間』であり、



『魂』は


命を宿すその器の

ただの呼称である。






                        ~ Sincerely yours ~




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