02:Holy Land
そこにあったものは、かつてはただの土地だった。
やがて国が生まれ、宗教が芽吹き、奪い、奪われ、最初の民たちが放逐された頃、ただの土地だったそこは「聖地」としての意味合いを持ち始める。
最初の民が奉じた、一つ目の宗教。
救世主が殺された、二つ目の宗教。
最後の民が奉じた、三つ目の宗教。
狭い狭い土地の中に、縛られるように点在する三つの聖地。連綿と紡がれる歴史の最中あって、幾度となく戦いの舞台となったのもここである。
ある時は一つ目の宗教に、またある時は二つ目の宗教に統べられ、それから長らくを三つ目の宗教が統治を続けたが、それも先の大戦を機に転轍機を切る。
大戦の覇者、連合国を率いてやってきた一つ目の宗教の民は、三つ目の宗教の民を追い出すと、自らの為の国家の樹立を、斯くて声高に宣言したのだった。
曰く、一つ目の宗教を奉ずる民の名を、ジュード人。
曰く、三つ目の宗教を奉ずる民の名を、ペリシテ人。
ジュード人は打ち立てた。聖地とそれ以外を分つ、長大な壁を。
ペリシテ人は分かたれた。嘆きの壁と呼ばれる、ソレによって。
これはそんな、さる大戦の後に起こった、小さな国の物語。
壁の中のジュード人の若者と、壁の外のペリシテ人の少女との、物語である。
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