第119話 俺、今、女子入学中
——学校に行く!
竜を倒した後に突然そう言われても、わけがわからないといった表情の
この世界にも、
「学校なんてあるの?」
意外そうな表情のあいつ。
もちろん、
「
「ぐっ——」
あいつが、俺の体に入れ替わっている状態で学校をズル休みする。つまり、それしか内申の取り柄がなさそうな俺の出席日数を一日減らしてくれたということだ。どうやら、それに結構罪の意識を感じているようで、困ったような表情で言葉を詰まらせるあいつだった。
まあ正直、今まで皆勤賞なわけでもないから、学期はじめのまだこの後のチュートリアルみたいな授業を一日休んだくらいでどうなるもんでもないが、ここでたてるもんなら優位に立っておこう。
「それに、お前ゲームの前にマニュアルも読まないし、攻略サイトとかも全然みないだろ。結構学校のミニゲーム、今回のマップの目玉みたいでな。あちこちでレビュー書かれてるぞ」
「ぐっ——」
こいつがマニュアル読むわけはないと思っていたが、やはり図星のようだ。それを見透かしたうえでの俺の追い打ちに、さらに困ったような表情で、また言葉を詰まらせるあいつ。
よし、今だ。
「聖都ルクスティン魔法学院だよ……」
俺は竜が落としたドロップアイテム——金貨50枚相当の赤い宝石——を拾いながら言う。
「——入学金は俺が建て替えといてやるから」
いや、建て替えといても、——魔法学校への入学金は実は金貨五枚。竜のドロップアイテムを俺一人でゲットすれば、これならだいぶ、……いや、ほとんど余る。だいたい金貨一枚が十万円相当なので、——450万円! さすが竜を倒すと違うな。というか、俺、大金持ちじゃん。
なんというか、あれもできるし、これもできる。ルンとか、ヒューさんとか、仲間と一緒に高級クラブ(異世界にもあるんだよ)にいってドンペリ(これも異世界にあるんだよ)あけたい! どうせこの世界の金は
俺は、そんなロクでもない放蕩三昧を夢想して、ちょっと口元をいやらしく歪ませる。
しかし、
「で、学校がどうしたのよ」
「あっ、悪い、悪い……考え事していた」
言葉途中で黙りこんでしまったので、ちょっとイラっとしたような顔になっている
まずい、まずい。竜のドロップアイテムの価値を
「これから学校に行くんだよ、聖都ルクスに作られた魔法学校、ルクスティン魔法学院に!」
俺は、慌てて
*
というわけで、やって来たのは、——ルクスティン魔法学院。
ほんの数日前まで、俺が、この世界をゲームとして俺が楽しんでいた頃のそこは、ゲーム本編と関係ないミニゲーム——息抜きの余興の舞台であった。そのミニゲームの舞台、新米魔法使いたちが青春学園ドラマを行いながら魔法の使い方を学ぶ、そんな場所なのであった。
ゲームのジョブとして聖騎士を選択した俺にはあまり意味がない場所であったので、わざわざ入学金を払ってまでそこで学ぼうと思わなかったのだが、一応魔法使いを選択した
「じゃあ、がんばって……!」
なので、受付で入学手続きを代わりにやってあげて、……さっき宝石商で換金した金の大部分が俺のふところに入ったのを気づかれるまえにさっさとその場を立ち去ろうとするのだったが、
「待ってよ! なによ! あんた一緒じゃないの!」
「えっ?」
腕を引かれて、留められる俺であった。
「一緒にこの学校に入るんじゃないの?」
「いや、俺は聖騎士だし……」
「聖騎士だと入っちゃいけないの?」
「そんなことはないが……」
別に魔法使い以外がこの学校に入っちゃいけないということはない。
もちろんジョブの性質上、魔法の力は大きくない。それで魔物を狩ったり敵を倒したりできるようになるまでになることは難しい者——俺みたいな聖騎士とか——が、あえて魔法学校に入ることは少ない。
けれど、火や水を発生させる日常魔法で遠征とかの途中の生活を快適にしようと思ったり、幻惑の発生などで戦いの際に相手の動揺を誘おうとか、魔法は覚えておいて損はない
しかし、
「聖騎士の小隊長様がですか……」
受付で自分の分の入学金を払った時に受付のお姉さんが怪訝そうな表情で呟く。
魔法力でなく霊力をつかって戦うエキスパート、それも小隊長まで成り上がった者が初心者用のこのミニゲーム——学校に入ると言うのは随分と違和感を感じるようだ。
「知り合いの付き添いでな」
「はあ?」
過保護なことでといった目でパチモン魔法少女——
そう結局、あいつの懇願にまけて俺もルクスティン魔法学院に入学することになってしまったのだった。あいつとの学校生活なんて、
俺と復活の神殿で会うまでは一人で行動してたくせに、たまたま一緒にいる人が見つかると、とたんに一人だと寂しく感じてしまう。こういうのも人間の心理の不思議だよね。と言ってみると、
「はあ……やっぱり鈍感な男ね……」
と呆れたような顔で言う
——?
その時、言われたことは理解不能だったが、それでもなんとなく胸の奥にもやもやと渦まく不可思議な感情に戸惑っていると、
「はい。みなさん静粛に!」
いつのまにか
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