第118話 俺、今、女子レベルアップ完了中
——あっ!
悲鳴をあげながら
いや、その顔もすぐ竜の口に飲み込まれて見えなくなったので、こりゃ完璧! 俺は、これを俺の必殺技としてこれからも使いまくってやろうか、
「あれ……」
その後の様子を見て、俺は一瞬言葉を失った。
いや攻撃は、失敗ではなかった。
俺の剣では一生致命傷を与えることなどできそうもない感じだった竜に見事に突き刺ささったあいつは、そのまま体内に進みその内部をたぶんズタズタにし……。
尻からぬるりと出てきたのだった。
——ウ●チみたいに。
——ポトリと。
その硬さを防御でなく、武器に使うことを思いついた俺は、あいつを口から差し込んで、竜を内部から破壊するという攻撃を行ったのだった。それはゲームとしてのこの世界には存在しなかった技。プレイヤーが選択することのできない技。
そして、その攻撃は、——成功した。
力なく、地面に横たわるウ●チでなく、パチモン魔法少女でなく、……
——おお!
その瞬間、ちょっと感動した俺だった。まだ
——俺は感動していた。
何と言ってもファンタジーでの魔物の王といえば竜である。それを倒した! 俺はドラゴン・スレイヤーとなったのだった。もちろん倒したのは竜といってもかなり下位レベルの竜だったが、それでも竜は竜。集団攻撃で相対した時には、こんなもの一生かかっても太刀打ちできないかもなと思った種族に一矢報いることができたのである……。
——あ、レベルも上がっている!
俺は目の前にスクロールされる自分のプロフィールの値を見て、50であったレベルが60まであがったことを知る。
さすが竜だ。レベル40くらいまではインフレでレベルが上がる
夏休みの最後の一週間を完全にプラ・マジに捧げた俺であったが、二日ほどでレベル40までいってからの残りの五日かけての10レベルアップであった。そしてレベル50となって聖騎士の小隊長というところまで上り詰めたところで、ゲームの中の俺(のアバター)ユウ・ランドと入れ替わってこの異世界の住人となったのであったが……。
あっという間の、一瞬の、10レベルアップであった。聖騎士の小隊長から中隊長くらいまでジャンプアップである。これって、ネットで攻略方法とか調べた時に見たゲームのwikiには、不眠不休でも二、三週くらいかかると書かれていたくらいのレベル差であった。
——ああ、竜を倒すということはそれほどのものなのだ!
俺は、万感の思いを持って、竜が消えたあとの地面をじっと見つめる。
感動!
歓喜!
とてつもない達成感に包まれて!
「あのう……」
ん、竜の消えた地面の向こうから、何か立ち上がったな。
ああ、
確かに、彼女には少し悪いことをした。相談したら嫌がられると思ったので不意打ちで秘術かけて人間槍と化して竜に突き刺したことは謝る。でも、こうでもしないと我々には、竜に勝つすべがなかったのだった。
きっと許してくれるだろう。
まさか、突き刺した
「あのう……説明して欲しいんだけど……?」
それも竜を倒すための尊い犠牲!
その尻からぬるりと出てくる様がまるでウ●チ地にしか見えなくて、正直心の中でクスッとしてしまったといっても、大事の前の小事であるとと……、
「嫁入り前の乙女になんてことしてくれるんじゃ、ボケええええええええええええええええええええ!」
理解してくれる訳は、もちろんなかったのだった。
*
というわけで、ウ●チ……、じゃなかった、
「乙女の純潔汚した責任……ゲームの中だけでなく、
と少し悪い顔をして呟く
いや、俺の現実は今この
責任ってそういう意味だよね……?
とかとか。
後から思えば、微妙にあいつの言葉の意味を取り違えながら困惑した表情を浮かべている俺に向かって、
「やっぱ、……その話は後でいいわ」
なんだか少し赤い顔で言う
「それよりも、——気を撮り直して、今日はまだまだ
何かを誤魔化すかのような性急さで先に進もうとする。
確かに、今日はまだまだ時間がある。俺の体に入れ替わっている状態で学校をサボった
だが……。
何事も猪突猛進で脳筋で突き進めば良いと言うものではない。
ならば、時間が、今日はたっぷりあるのだし、
「いや、今日は迷宮はこれくらいにして、別に行こう」
だから俺は、あいつに、
「は? 別?」
行くのはどこかって?
あいつは、迷宮に連れてこられたあとに、今度はどんなところに行かされるのかとちょっと不安げな顔になるのだが、
「学校だ……」
「え、学校って、今日もう休むって連絡したって知ってるでしょ? 何、午後から行けって言うこと」
いや。俺は顔を横に振る。
「——
「現実?」
うん。お前の現実ではない。
今の俺の現実での話ってこと。
つまり……。
「
俺は、きょとんとした顔をした
「聖都ルクスティン魔法学院に!」
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