第5話 登場!ゴンスパパ!
<ドシン!ドシン!>
『ふーっ。町に着いたでゴンス』
[むぉ!早くここから離れてくれッ!]
「どうしたのアンドリュー?」
[我々はこの酸っぱい匂いがたまらなく嫌なのだ!]
「え~?“酸っぱい匂い”?するかなぁ?」
『あ~町の周りはアント避けに“酢”を撒いているゴンスよ』
[うぐぅッ!たまらん!]
「なんかアンドリュー苦しそうだから早くゴンスパパに会いにいこう?」
『そうでゴンスね』
町中に入るとアンドリューは一息ついた様子で[…死ぬかと思った]とゲッソリしていた。
雑多な町中で、ゴンスは人気者のようで、周りの人達から口々に挨拶をされていた。
「ゴンスすごいね!人気者なんだね!」
『普通でゴンスよ。あ、ここでゴンス』
「でっかーッ!」
[これは…!すごい…!]
インドの宮殿のような出で立ちの豪邸が目の前に広がっていた。
<ドシン!ドシン!>と中へ入っていくと、召し使いのような人達がみんな頭を下げていく。
『ゴンスっておぼっちゃんなの?てかみんなゴンスより大きいんだけど、ゴンスっていくつなの?』
『あー“おぼっちゃん”でゴンスねぇ。家がでかいだけでゴンス。ちなみにゴンスは10才でゴンスよ』
「ゴンス!タメ年じゃーん!」
アンドリューは珍しいものでも見るように辺りをキョロキョロしていた。
「アンドリュー、落ち着かないの?」
[あ…あぁ…なんだか圧倒されてな]
「あぁ~分かる~。初めての場所って落ち着かないよね!」
[みーなは初めてじゃないのか?]
「ここは初めてだけど、小さい頃から色んなところ行ったからな~。インドで似たようなの行ったことあるんだよ」
[そ…そうか。
「アンドリューの家はどんなの?」
[アントは地下に住んでいるからな。家というか、部屋はある。まぁ質素なものだよ。ここは…すごいな…]
アンドリューは素直に感心しているようだった。
中庭を抜けて屋敷の中に入るとゴンスは、召し使いに『父ちゃんはどこでゴンスか?』と聞くと、召し使いは『いつもの場所においでです』と言った。
「他の人はゴンスゴンス言わないんだね!」
『ゴンスはおいどんだけでゴンス』
「はは!そっか!」
『父ちゃーんいるでゴンスかー』
『ゴンスー!こっちガネよー!』
庭の奥から声が聞こえた。
「“ガネ”?」
『父ちゃんは“ガネ”っていうゴンス』
「ふぅんそっち系か」
[なんだ!?なんの話だ!]
「あぁ、多分名前」
[名前?]
ゴンスに肩車されて庭の奥に行くと、ゴンスパパらしき人がバナナっぽい木の手入れをしていた。
山のようにでかい。
『おぅおぅゴンス。“ピンキーモンキー”と友達になったガネか!』
地鳴りのような声が響き渡る。
『なんか“ピンキーモンキー”じゃないらしいゴンス』
「こんにちわゴンスパパ!」
『おぉぅ!しゃべったガネ!』
『“友達”でゴンス。父ちゃん、みーなは迷子でゴンス。“ブロイン”の話をして欲しいでゴンス』
『ブロイン!?あの言葉を話す黒猿紳士でガネか!?いやぁ懐かしい!』
[顔が見えん!まさか…“天上エレファント”か…!?]
「なに?“天上エレファント”!?」
『ほぅブロインから聞いていたガネか。いかにも!わしが“天上エレファント族”元皇王、ガネシャ・マンモス1,853世だガネ!』
「“
『うむ、ブロインが来た時に“王国制”はもう古いと言われてな。それで“民主主義”に変えたのだガネ。今はただの隠居の身だガネ、何かとみんなが助けてくれるガネよ。
ブオォブオォ!』
そう言ってゴンスパパが笑うと地響きが起こった。
[ぐあぁ!体がバラバラになる…ッ!]
「えー!アンドリュー!ちょっと!ゴンスパパ!小さい声で話して!」
『なぜだガネ?』
「小さい“お友達”がいるの!」
『“お友達”?』
『父ちゃん、“アント”でゴンスよ』
『“アント”が友達か!ブオォブオォ!子供らしくていいが、耳には気を付けてガネなッ!』
[ぐあぁ!ぐあぁ!これが、3億の兵士を無き者にした伝説の“マンモスボイス”か…ッ!]
「笑うの止めてッ!ゴンスパパ!」
『はて…どうしてだガネ?』
「ゴンスパパが笑うとね、アンドリューが苦しそうなの!だから静かに話そう?」
『確かにわしの“マンモスボイス”はアントを蹴散らすガネ。そうか、おまえ達の友達だガネな。気を付けるガネ』
「ありがとうゴンスパパ。アンドリュー、大丈夫?」
[はぁ!はぁ!す、すごい力だな…“マンモスボイス”…体感させてもらった…]
『ほぅほぅ、名前があるガネか。ブロインを知るその娘はなんというガネ?』
『“みーな”だゴンス』
「あ!遅れました“みーな”です!宜しくお願いします!<ペコリ>
こっちはアンドリューです!」
『はい宜しくだガネ。アンドリューも宜しくガネ』
『父ちゃん、アンドリューは話せるらしいでゴンス』
『なぬ!?ブアッハッハッハッ!“アント”が“話す”ガネ!?ブアッハッハッハッ!』
[ぐあぁッ!ぐあぁッ!]
「ちょっと!ゴンスパパ!笑っちゃダメッ!」
『ガネガネガネガネ!すまんすまん!わしも昔そういう遊びをしたガネ!』
『父ちゃん、みーなの遊びなの?』
『いやぁ、“アント”は虫だガネ。ただ、心の声は聞こえるかも知れないガネよ。ゴンスもたくさんみーなと遊びなさいガネ』
「いや、ホントにしゃべってるんだってば!」
『わかったわかった。向こうで遊んでなさい』
『父ちゃん、みーなは“迷子”なんでゴンスよ』
「あ!そうなの!どうやって帰ったらいいかなぁ?」
『そうなのガネか。確かブロインはキラキラ光って帰っていってたガネが…』
「えー?来るときのアレかなぁ?」
『出来るゴンスか?』
「うーんどうだろ?ちょっとアンドリュー持ってて」
『はいゴンス』
ゴンスは鼻を伸ばしてアンドリューを受け取る。
[うぅ…かたじけない…]
フラフラとアンドリューはゴンスの鼻上に座った。そしてみーなはゴンスの肩から<シタッ>と飛び降りた。
「うんよし!んんん~ッ!」
<シーン>
「はぁッ!はぁッ!ダメだ。あのテーブルがないと出来ないのカナ…<しょんぼり>」
『まぁ、帰るところがないならここにいていいガネよ。きっといつかブロインが迎えに来てくれるガネよ』
「うん…ありがとうゴンスパパ。あ~ぁ、今日はプリクゥア見れないかぁ~<ガックリ>」
『ガネガネガネ!ゆっくりしていきなさいガネ』
そう言うとゴンスパパはどこかへ行ってしまった。
『みーな!しばらく一緒に居れるゴンスね!元気出すゴンス!』
「まぁ、そうね!仕方ないっか!でもきっと大人はアンドリュー達がしゃべれること信じてくれなそうだなぁ…」
『おいどんはみーなを信じるゴンスよ!』
「ありがとうゴンス!でもこれからどうしようかなぁ…」
[みーな、私達の国へ来てくれないか?]
「アンドリューの国?」
[私は大人だ。“エレファント”に大した文明があるのはわかった。私の言葉なら女王様には届くだろう]
「そっか、じゃあそうしよっか。近いの?」
[ここを出て、さっきの場所から山一つ越えたところだ。君達の足ならすぐだろう]
「そか、わかった。ゴンス、アンドリューの国へ行ってみない?」
『アンドリューの国?ちょっと怖いでゴンスな…』
「あ~、そか。わかった!じゃあ私行ってくるわ!ゴンスは待ってて!」
『え~…いや!じゃあ行くでゴンス!みーなと一緒にいたいでゴンス!』
「えー!ありがとうゴンス!アンドリュー、ゴンスも一緒に行っていい?」
[うむ、ゴンス殿が天上エレファント族の皇太子ならうまくいくかも知れないな]
「ゴンス。アンドリューと話が出来たらもうアンドリュー達を潰さない?」
『うーん、気を付けるでゴンス』
「アンドリュー、ゴンス達がアンドリュー達を潰さないように気を付けたら、もう耳に入らない?」
『それはもう、願ったりだ!』
「じゃあ、お互いにこれからは助け合っていけるね!」
『母ちゃんから“アント”も生きてるのよって聞いてたでゴンス』
[うむ、私もムダに兵士達の命を落としたい訳ではないでな]
「よし!じゃあ“エレファント・アント仲良し大作戦!”を開始します!」
『わかったでゴンス』
[宜しく頼む]
「うん。そしたらまずは二人が仲良くして!」
『どうしたらいいゴンス?』
「う~んそうだなぁ。ゴンスの耳元でアンドリュー叫んでみたら?」
[む?叫ぶ!?]
『また耳に入ったら怖いでゴンス…』
「お互い信頼するには意思疏通が出来ないと!まずはゴンスがアンドリューを信用して!」
『わ、わかったでゴンス!』
「じゃあアンドリューを耳に持っていって」
『う…うう…』
ゴンスはそ~っと鼻から耳元にアンドリューをおろした。
[私は何を叫べばいい?]
「あー“ゴンスー!”でいいんじゃない?」
[わかった]
そういうとアンドリューはゴンスの耳に入っていった。ぎゅっと目を閉じて耐えるゴンス。
[…-!…-!]
『あ!』ゴンスの目がぱっちり開いた。
「聞こえた?」
『なんとなく!何を言ってるか分からないゴンスが』
[どうだ?]耳からスタスタとアンドリューが出てくる。
「なんとなく聞こえたみたい」
[そうか、みーなはよく同時に聞こえるな]
「いやーなんで同時に言葉がわかるんだろうね?」
『ピンキーモンキーはすごく耳がいいでゴンス』
「それってあの猿でしょ?だから私は違うって!」
『ぶはははッ!』
[ハハハッ!]
初めて二人が笑い合う。
「あ、笑った。アンドリューはゴンスの笑い声は大丈夫なの?」
[うむ、大丈夫みたいだな]
『“マンモス・ボイス”はエレファント族の皇族が大人になったら出るものでゴンス』
「そか、声変わりがまだなんだね」
『んだ』
[“声変わり”?声が変わるのか?不思議なものだな、エレファントとは…]
「じゃあアンドリューの国へ行こー!」
『おー!でゴンス!』
[うむ、良い方向へ向かうといいな]
そうやって3人はアンドリューの国“アントアネット”へ旅立った。(徒歩30分)
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