第4話 ブロイン始動!

<フシュウゥゥゥゥ…>


 ブロインが屈んだ状態で大地に降り立つ。


“E-7 惑星『エレファントアント』到着完了”


想念領域イディア・フィールドにプラグイン”


<ブゥン>


 真っ白い部屋の中心に円卓があり、6人の男女が席についている。


姿で会うのは久しぶりだなみんな」


“ブロイン”と同じ姿した男が口を開く。


「キャロライン、いつもありがとう。今日も可愛いね」

 ラフな格好をした青年が、若い女性に話し掛けた。


「やーだーユーリたらぁ♥」

 キャロラインと呼ばれた女性は頬をポッと赤らめる。


「ユーリィィィィッ!あぁユーリィィィッ!久しぶりだぁこの感覚…ッ♥」

 上半身裸で下半身黒タイツの華奢な男がユーリと呼ばれた青年に抱き付く。ユーリは少し困った顔をしている。


「パディ・ルーラー。席に着きなさい」

 真っ白いスーツを着て眼鏡を掛けた女性がパディと呼ばれた男性を諌めた。


「堅いこと言わないでさラモル。さ、君も一緒にユーリを抱き締めよう!」


 ラモルと呼ばれた女性はキリッと眼鏡を掛け直すと、高いヒールをカツカツと鳴らしながらユーリとパディに近付いた。


「か、母さん?」


 途端にラモルはパディと一緒にユーリに抱き付く。


「あぁユーリ!その口からまた“母さん”が聞けるなんて!ユーリ!ユーリ!」


 ユーリの頭にぐりぐりと顔を押し付け眼鏡をずらしながらラモルはユーリを抱き締め続ける。


「あー!私もするー!」

 キャロラインも笑顔でユーリに駆け寄りぐりぐりと抱き締める。


「ハ…ハハ…ボガリア…」

 ユーリははにかみながらチラリとブロインに似た男に助けを求めた。


 ボガリアと呼ばれた男は“うんうん”と笑顔でその姿を温かく見ている。


「兄さん…そろそろ始めようか」

 スラリとしなやかな身体をした黒人女性がボガリアに問い掛けた。


「まぁ、十年ぶりの想念領域イディアフィールドだ。みんな気持ちが高ぶっているのだろう。

 先代、ニコラ様のご厚配により、この想念領域イディアフィールドに限り、自我が色濃く反映されるようになった。私もおまえの顔が見れて嬉しいよルーシー」


「兄さん。私もだ…」


 そう言って二人は微笑み合う。


『ブロイン』の想念領域には6つの“イディア”が存在する。


 一つ目は最古のイディアである“ボガリア・ブロイン”

 彼は元々伝説の守護者で、『ブロイン』のボディは彼をベースに作られている。現在はこの想念領域イディアフィールドにおいて司令塔の役割を担っていた。


 二つ目はボガリアの妹である“ルーシー・ブロイン”。

 非業の死を遂げたボガリアの後、ナノマシンシステムを搭載した『ブロイン』が開発された。

 ボガリアの後を継ぎ、『ブロイン』の最初の搭乗者に任命されたルーシーは主に『ブロイン』の操作を任されている。戦闘のエキスパートである。


 三つ目のイディアはみんなの人気者、“ユーリ・グローリー”。

 元はIQ300の天才少年だったが、幼い頃から“心”が認識出来なかった。様々な“愛”に触れ、“心”が覚醒。ナノマシンシステムに精通している。


 四つ目は“ラモル・グローリー”。

 ユーリの実の母親で、ユーリを溺愛している。普段は冷静沈着な秘書として、みんなのサポートをしている。


 五つ目のイディアは“キャロライン・マナシス”。

 ユーリのいわゆる『彼女』である。特技は“笑顔”。普通のお姉さんだが、縁あって『ブロイン』に収納された。21歳(収納時年齢)。


 最後のイディアは“パディ・ルーラー”

 金髪の長髪、切れ長の目に華奢な体、いわゆる“王子様”な外見とは裏腹に変態である。上半身裸で下半身黒タイツ姿を愛する。

 ユーリの“親友”である。

 パディもまた、天才的な頭脳を持って世界を破滅に導こうとしていたが、『ブロイン』に制圧され、これに取り込まれる形になった。ユーリのことが大好き。


(彼らの物語は前作“キャロラインの憂鬱”にて ※R18推奨)


 以上6つのイディアを内包し、『ブロイン』はその機能と共に、高いイディアパワーを誇っていた。



「よし、じゃあそろそろ会議を始めるぞ!みんな席に着け」


 ボガリアが号令を掛けると、みんながいそいそを席に着いた。


「…よし。今回のミッションはまず、我々の宗主である“みーな様”を無事保護することにある。しかし『ブロイン』とのリンクが為されていないみーな様を探知することはまだ出来ない状態だ。そこでみーな様探索の為にみんなの意見を聞かせてくれ」


<ルーシー>

「高いイディアパワーを感知して探していくしかないな。幸いイディアホールに向かう前にみーな様のイディアパワーが高いことが証明されている」


<ユーリ>

「そうだね。ただここも10年振りだけど、日本の国土くらいの広さはあるから探すの大変かも」


<キャロライン>

「一人一人当たるしかないかなぁ」


<ラモル>

「効率的ではありませんね。前回訪問した“エレファント民主国”から訪ねてみるのはいかがでしょうか?」


<ルーシー>

「エレファント達は温厚民族だ。みーな様を保護している可能性はあるな」


<パディ>

「僕の天才的な頭脳から分析すると、みーなの外見はこの惑星にいる固有種“ピンキーモンキー”に酷似している。

そこをかんがみると、“ピンキーヘッド”の訪問から始めてもいいかも知れないね」


<ボガリア>

「ふぅむ。わかった。ではこの地点から一番近い“エレファント民主国”から訪問し、次に“ピンキーヘッド”それらでこの星の近況情報を得た後、改めて会議を行う!今回は緊急事態により、便宜上私がメインイディアを務めていく。

各位それぞれのイディアを高めていてくれ。以上だ」


 ボガリアはそう言うと体が光輝き消えていった。


<ルーシー>

「みんな、私は兄さんのサポートにまわる。ラモル、任務が終わったらゆっくり話でもしよう」


 そう言ってルーシーもボガリアの後を追うように消えていく。


<ラモル>

「そうですねルーシー…」

 ラモルとルーシーはお互いが初めての“友達”だった。


<キャロライン>

「わーい!ユーリィー」

 たたたた、むぎゅう


 キャロラインがユーリに抱き付く。


<パディ>

「フオォォォッ!ブロイン最高!ブロイン最高!」

 パディはそう言って全裸になった。


<ラモル>

「パディ。はしたないですよ」


<パディ>

「ふふふラモル!この僕の彫刻のように美しい肢体に“はしたない”は似合わないよ!“嫉妬”かい!?この僕の美しい体に!!」


 ぷりんとしたおしりを輝かせながら、大きくバレリーナのように高らかに踊るパディ。


<ユーリ>

「母さん、パディの好きにさせてあげよう」


<ラモル>

「そのようね…あぁ!ユーリ!“母さん”って呼んでくれるのね…!何回も…何回でも呼んで!」


<ユーリ>

「母さん母さん母さん母さん母さん母さん」


<ラモル>

「あぁーッ!響く!胸に響くわユーリッ!」


 キャロラインはユーリを抱き締めながらモフモフとしている。


 白い部屋の中を全裸で踊り狂うパディを尻目に、泣きよがるラモル。「母さん母さん」と言い続けるユーリ。そのユーリを笑顔でモフモフするキャロライン。


 それぞれの想いを乗せながら、『ブロイン』は一直線に“エレファント民主国”の首都・マンモスに向かって最高速度で走り出した。






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