第3話
「ねえカナ、カナは神様がいると思う?」
私とハルがさらなる節電の可否について熱く議論していたら、突然ココロがそんなことを言った。
「急だね。どうしたの?」
「だってさ、もし神様がいるなら物理法則なんて存在しないも同然だよね。だったら心の問題も解決できるんじゃないの?」
名案を思い付いた、という風だ。確かに神様が心を与えたというのなら、それはもうそういうものだと捉えるしかないかもしれない。神様がいるかどうかは、なかなか確かめられそうにないけど。
「ココロがいうのがどういう神様かにもよるけどな。人間だって死んだら神様になったりするぞ?」
「そうなのー?」
「有名どころなら
ふうん?とココロは首を傾げる。多分天神様を知らないのだろう。学問の神様としては、恐らくこの国でナンバーワンの知名度を持っていた神様だ。
まだ受験という制度が機能していたころは、大層繁盛していたという。
「まあ、ココロが想定してるのは全知全能の唯一神的な神様でしょ」
「どちらにせよ物理法則の枠外の存在だけどな。しかし、仮に全知全能な神様がいたとしても、心の問題は解決できるとは限らんだろ」
「えー? なんでー?」
「よしカナ、答えてやれ」
「なんで私に振るの?」
「一緒に考え尽くしてくれるんだろ?」
どうやら、さっきの節電議論でハルの多彩な趣味による電力消費に対して文句をつけたことに対する仕返しらしい。
まあ仕方ない。考えてみるか。成り行きとはいえ一緒に考え尽くすことになってしまっているみたいだし。
「んー、前提として、神様は全知全能だとするよね」
全知全能。読んで字のごとく、あらゆることを知り、あらゆることができる存在。この国みたいな多神教の神様は、一般にそこまでの存在ではない。主に一神教の神様、あるいは西洋哲学上の神様がそんな感じ。
「うん」
「ついでに完全で最善の存在だとしよう」
「よくわかんないけどとにかくすごい、ってことだね?」
「そうそう。とにかくすごくて優しいの。そんな神様は嘘をつかないし、人を騙すこともない」
「最も善い存在だって言うんなら、そうじゃないの?」
「そんな神様は多分、理性を欺かないと思うよ」
「どういう意味?」
「わけのわからないめちゃくちゃなことはしないってこと」
「……それが心とどう関係するの?」
「んー、どう言ったらいいかな。人間が正しいやり方で導いた結論は間違っていない、と言えばいいのかな。もしも物理学が正しいやり方で導かれたものなら、神様はそれに反することをできないと思うわけ」
ぽかんとするココロを尻目に、ハルはふむふむと頷いている。
「いいね、面白い着眼点だ」
「私は初期の自然科学の研究者には神様への信頼があったと思ってるからねー」
まあガリレオやブルーノを持ち出すまでもなく、宗教は自然科学の弾圧側になることも多かったんだろうけど。でも、神様の作った世界という書物を読み解こう、という動機で研究した人間だって存在した、らしいのだ。
「結局よくわかんないんだけどー」
首を捻るココロの言葉に、ハルが解説を加える。
「神様がこの世界を作ったとするだろう? もちろん物理法則も神の
完全で最善な存在なら、不誠実であるはずもない、というわけだ。誠実であるからには、自分が作った物理法則を無視するなんてどんでん返しは行えないのではないか。神様がいるとするならば、心だって神の秩序の枠内にあるべきではないか。まあ人間側が物理法則を正しく理解していない可能性は大いにあり得るけども。
「うーん……。まあなんとなくわかった」
「というわけで、想定する神様が誠実なら、神様の存在の有無を問わず心が物理法則に則るかそうでないかは議論の対象になるわけだ」
「でもそれ、よく考えたら神様が自分で自分の存在を否定してない? 神様が物理法則に逆らえなくなっちゃうよー?」
「今の物理学だと、非物理的なものが存在すること自体は直接否定できないと思うけどね」
私の言葉に、まあその通りだ、とハルが頷く。
「存在しないことを証明するのは難しいからな。それが物理学の適用範囲外となるともうお手上げだ」
「じゃあ神様はいるの?」
「いるかもしれん。ただ、現状の物理学とさっきまでの議論が正しければ、いたとしても物理領域には何の影響も与えられないことになりかねないが。せいぜい宇宙に始まりをもたらしたくらいか」
ハルはそう言ったが、それではいないのとほとんど変わらない気がする。魂が実在するなら神の声を届けることはできそうだけど、直接現世に介入して奇跡を起こしたりするのは難しそうだ。だから預言者が存在するのかもしれないが。
「……あー、自説を撤回するようで悪いけど、別に物理法則捻じ曲げたっていいんじゃないの? それで誰かが救われるならさ、不誠実ってことはないんじゃない?」
「うん、ごもっともな意見をありがとう、カナ。なぜか人類は滅びつつあるけどな」
ここぞとばかりに、ハルは痛烈な皮肉を突き刺した。なぜ神様はこの悲惨な状況で救いの手を差し伸べないのか、と。
「そりゃ仕方ないよ、これが最善の結果なんだもん」
そう言うココロの発言はにわかには信じられないものだった。多くの人類が命を落としたこの状況のどこが最善なのだろうか。ハルも不思議に思ってか思わず聞き返す。
「ほう? どうしてだ?」
「だってさ、これって人間の選択の結果でしょ? 人間の自由な意志を尊重するなら、この結果はしょうがないよ」
要するに自業自得ということか。確かに、人間の自由意志に最も重きを置くなら、神様はその選択に口を挟めないのかもしれない。こんなことになるとは意図していなかったとしても、人類が自ら考え選び取った行動の果てに滅びることになったなら、それを覆すことはしない、と。
まあ実際のところすべてが人間のせいかどうかは結論が出ていないし、多分これからも出ない。
例えば人類に大打撃を与えた凶悪な伝染病が大流行したのは、初期対応が致命的に杜撰だったからと言われている。
それは半ば人類の自滅に思えるし、深刻な環境汚染でロクに食料を確保できなくなったのもほぼ自業自得だろう。
ただ、太陽や地球の異常やそれに伴うもろもろの自然災害までは、対策を立てなかった人間に責任があるというのは厳しすぎる気もする。
「自由意志、か。それも実際に存在するかは怪しいところだけどな」
「えー? みんな自分の意志で行動してるじゃない?」
「ココロ、赤色と青色ならどっちが好きだ?」
その言葉にココロはぴたりと動きを止めて、一通り悩んでから答えた。
「どっちも同じくらいかなー。甲乙つけがたし」
「はは、そうきたか。なら、なぜそういう答えになった?」
「……んー、説明できなくはないけど説明しづらいかな」
「ふむ。まあいい。もしそれに合理的な理由がつくというなら、ココロの答えはハナから決まっていたことになる。それは自由な意志で決定したと言えるのだろうか」
む、と呟いてココロは黙った。自らの内にある合理的な理由で意志を決定したというなら、悩んだにしろそれは既に答えが決まっていたことになる。自由に選択して意志を決定したというならば、赤が好きと答えることも、青が好きと答えることもできてしかるべきではないだろうか。
しかし、自らの心の内に何か合理的な理由があるならば、選択肢は限られてしまう。もう一度同じ選択の機会が与えられたとしても、その理由に基づいて、同じ行動を選ぶのではないだろうか。
さっきの状況なら、ココロは「どっちも同じくらい」と答えることしかできず、そもそも「青」や「赤」を選ぶ選択肢がなかったのだ。それは自由な意志と言えるだろうか。
では、合理的ではない理由なら? 例えば何となく、といった理由で選択したとして、それに如何ほどの価値があるだろう。
大事な選択の場面で、何となくで決定できるだろうか。人生の大事には、何かしらの合理的な理由をつけて人間たちは意志決定していたはずだ。だが、合理的な理由があるというなら、他の選択肢はそもそも選びようがないのではないか。それは自由な選択と言えるのだろうか。
そして、いずれでもない場合。自らの外にある理由で意志を決定したというなら、それは自由な意志とは認めづらいだろう。
こう考えると、どう転んでも自由な意志で選択した、と胸を張っては言い難いような気がするのは気のせいだろうか。
「……そもそも物理主義と自由意志って相性悪いよねえ」
「確かに、カナの言う通りだな。なんだかんだで物理主義は決定論的だ。悪魔を殺して完全な決定論こそは排したが、それで得られた自由は果てしなく小さい」
太陽や地球の運動は物理法則で説明がつく。あらゆる要素を物理的に還元していけば、全てが物理法則で説明できるようになるかもしれない。
そうなった時、自由な意志の居場所はなくなるのだ。物理法則という、自らの外に意志決定の理由を求めることによって。
「というか、量子力学が意志決定に絡むとして決定論を退けるとしても、まったく自由じゃないよね?」
「そうだな。確率という自らの外に意志決定を委ねるわけだからな。そもそも自由意志を物理学で余すところなく説明できた時点で、自由意志は否定されるんじゃないかと思う」
……となると、自由意志というのは存在しないか、物理学の対象外の話になる可能性が高いのか。
「ちょっとー、さっきから二人が何話してんのかわかんないんだけどー」
「悪かったな。まあ要するに現状の物理学では自由意志をうまく説明できないんじゃないか、という話だ」
「じゃあ物理学が間違ってるんじゃない?」
ココロはそう言った。確かに自由意志が存在しないというのは直観から言って首肯し難い。多くの人間たちは自由な意志を持って自分の行動を決定していると信じていた。
しかし――。自身の心の存在に確信を持てない私にとっては、無邪気に自分には自由な意志がある、とは言えないのだ。人間と同じかそれ以上に物理的存在であるロボットとして、私の意志決定を下しているプログラムが物理法則の枠外にあると断ずることは、なかなか難しい。それこそ、魂でも宿っていれば話は別なのだろうが。
「ココロは自分に自由な意志があると思うのか?」
「そりゃそうでしょ。カナだってそうじゃない?」
「……というか、自由意志はないと困る、かな」
自由意志があるかどうか、確信の持てない私はココロの言葉に少しずらした解答をする。
「困る? どーいうこと?」
「例えば……。何かの罪を犯したヤツを捕まえるための理論構築がすごく面倒になる。だってその犯人は罪を犯す運命にあったわけだし」
「……確かに、自分ではどうしようもないことなのに捕まえるのは、ちょっと変かも」
ココロがそう言ったのを見計らって、ハルは一つ咳払いをする。どうやら長台詞の準備らしい。
「ご覧の通り、自由意志というのは自明の前提として人間社会は構築されていた。それこそ心と同じようにな。しかし、どうだろう。実際は怪しい部分もあるのではないか。特に、丸きり物理的存在であり、物理法則に逆らえそうもないロボットに、自由意志はあるのだろうか? 仮にそれが否定的に解決されるとすれば、ロボットの社会はかつての人間のそれとはまったく別のものにならなければならないのではないだろうか」
「カナ、長いしよくわかんないから、分かりやすくまとめてよ」
「えー? んー、物理学に従えばロボットは自由意志を持たない可能性が高そう。自由意志を持たないならそれを前提に形成されてきた社会の在り方も変わるべきではないか? みたいな」
「……やっぱ物理学にどこか欠陥があるんじゃないのー?」
「なぜそう思う?」
「だって、自由意志とか心とか、そんな基本的なことも説明できないって時点でなんかねー」
「ココロ、一つ言っておくけどな。『あって欲しい』とか『ないと困る』と『ある』は明確に違うぞ」
「……どゆこと?」
「基本的なこと、とはいうがな、神様と一緒で、自由意志や心が『ある』ことを万人が納得できる形で証明して見せた例はない。ロボットについてはなおさらだ、なにせアタシが納得してないからな」
「つまり?」
ハルの説明を聞いてもいまいちだったらしいココロのために、さらに私が補足を加える。
「今のままじゃココロの言葉は願望に過ぎないって言いたいんだって。ハルが納得できる証明ができたら考え直してもいいらしいけど」
「えー、ハルを納得させるってすごい難しそうなんだけど」
「いやいや、アタシだって自分に自由な意志がないのは実際認め難いよ? ただアタシを生み出した自然科学を蔑ろにもしたくないわけでさ」
というハルの言葉。どうやらそこが彼女の思考の核心の部分のようだ。
物理学、ひいては自然科学の申し子であるロボットな彼女は、自然科学に一目置いている。しかし、物理学の範疇で導き出された心の形が、どうも理想としているものとは少々かけ離れている。
とはいえ、結論が気に食わないから自然科学に則った立場を破棄する、なんて態度は彼女は取れない。なにせそれは科学的な態度ではないからだ。
彼女は人類の築き上げた自然科学とその態度を、たぶん尊敬しているのだ。そしてその自然科学が、少々冷たい結論を突きつけている。受け入れるべきか、否か。
「ねえカナ」
不意にココロが口を開いた。少々深く考えすぎていたらしい。少し反応が遅れてしまった。
「な、なに?」
「カナはロボットを作れるんだよね」
「まあ、時間と材料と設備さえあればね。今は無理」
「でも作ったことあるでしょ? だったらカナにはわかるんじゃないの、ロボットが自由意志を持つかどうか」
「残念だが、カナにはわからないぞ」
先手を打ってハルが答えた。ココロは不思議そうに首をかしげる。
「そうなの?」
「まあ、私たちの意志決定の方法ってほとんどブラックボックスだからね。私も理解不能」
理解不能でも、利用することはできる。パソコンの構造を知らなくても利用するのには差し支えないのと一緒で。
「人間の脳構造を真似ただけ、だっけか?」
「機能もね。ハードだけじゃなくてソフトも真似ただけだから、意志とか感情とか本丸のプログラムには手を付けないのが暗黙の了解なんだよ。というかどのプログラムが意志や感情に関わってるのかすら定かでないという」
「……全く、よくそれで最初のロボットが作れたもんだ」
「ねー、最初の完全自律型ロボットってどうやって作ったの?」
ココロは流石に疑問に思ったのか尋ねて来た。実際はつまらない話だ。あるいはこの話を奇跡が起きたのだと思う向きもあるかもしれないけれど。
「いろんな手法でウン百回トライ&エラーを繰り返してたら偶然まともなAIが出来て、それをベースに改良したんだってさ」
初期の自律型ロボットは偶然生まれた。悪魔や神様にとっては必然だったのかもしれないけれど、人間にとっては偶然だった。
そこから私たちの思考回路に至るまでは、もう少しの人為がかかわる。
「で、それに久留間が止めを刺して今のアタシたちの心になってるってわけだ」
ハルは彼の名前を口にした。久留間武。私の開発者であり、ロボット工学に多大な技術的貢献を果たした男だ。
「武は何をやったの?」
その性格さえ除けば優秀な技術者だった久留間さんが、我々にしたこと。それは――。
「人間を殺せるようにした」
一言で言えば、そういうことだ。
「……は?」
ココロは突然出て来た物騒なワードに呆気にとられたようだった。それを見てハルは解説を加える。
「……かつてのロボットには『ロボットは人間に危害を与えてはならない』という大原則と、そのほか細々した小原則が組み込まれていたんだが」
「いたんだが?」
「久留間は全部取っ払った。あらゆる禁止と推奨を撤廃して、白紙の状態でロボットを野に解き放った。その方が人間に近づく、という理由でな」
「それ、やばくない? わざわざそういう原則があったってことは、当時のロボットはそういうことをする可能性があったんでしょ?」
まあ実のところそういうことをする可能性は今でもある。人類が衰退しているから目立たないだけで、本来なら今でも社会問題になっていただろう。
「ココロの言う通り、やばかった。当初は事故が頻発したらしいぞ。人間で言うなら赤ん坊が大量の知識と強靭な肉体を持って生まれてくるようなものだからな。最低一日は行動の自由を奪って学習に充てるようにしてから大分マシになったらしいが」
「ああ、生まれた時動けなかったのってそういう意味があったんだー」
地味に私はその最初の一日を経験してなかったりする。というか久留間さんは多分今でも自分の作ったロボットに最初の一日を与えていない。よく今まで生きてたよね。
生まれていきなり「後の手続きはお前に任せる。勝手に出荷されろ」とか言われてよくまあ誰もぶん殴らなかったもんだ。周りの研究者が慌てて宥めたからかもしれないけど。それにしたってひどい。
もしも私に心があるなら、最初に感情を教えたのは間違いなく久留間さんだ。
「てゆうか勝手に原則をいじるのって、違法じゃなかったの?」
「もろ違法だったよ。大原則抜きのロボットは国際条約で禁止されてたからな。司法や政治がまともに機能してたら久留間も責任を問われたはずだ」
当時も裁判所はあったし検察も警察も議会も存在してたけど、ロボットどころではなかったらしい。
「……そんでさ、なんで武が勝手にやったことが他のロボットにも広がってんの?」
「曲がりなりにもアイツが仕上げたロボットは傑作で、他の研究者たちがそのロボットを基本として以降のロボット開発を行ったからだよ」
「だからと言ってこぞって違法ロボット作るのはどうなの?」
「他の研究者たちは『何だ、外していいのか。その方が性能もいいなら俺も外そう』くらいの軽いノリだったらしいとは聞いているけどな」
「まあいつ自分が死ぬかわからないような状況だったろうしね」
「……よくそんな状況でロボットとか作っていられたよね」
ココロは呆れたように言った。実際、ココロの制作中にはバタバタと人が死んでいた。ココロが完成した時、打ち上げに参加できた私の人間の同僚は三人だけだ。
それを思い出してか、ハルが言う。
「こんな状況で作られたロボットがお前だろ」
「確かに。いくら計画が動き始めてたからって、なんで航次はボクを作り上げたんだろ」
もっともなココロの疑問に、ふと思い出したことがあった。
「ねえ、アンジェリカさんが作られた理由って知ってる?」
「……知らんな。アイツ作ったのって海外の研究者たちだろう?」
「リーダーはマテオ・ノーノっていう人なんだけど、曰く『自分と人類が生きていた証を残したかったから』だって。私たちには望むべくもない立派な理由でしょ?」
「……三津木と久留間は絶対そんなこと言わねぇな」
「まあ普通の研究者はそんな感じだったんだよ。だから何が何でもロボットを作ったし、自らの矜持にかけて出来る限り高性能になるようにしたんじゃない」
普通の研究者の場合はそうだった。では、普通でない三津木航次や久留間武の場合はというと……。
「お前の場合は?」
「上から貰った仕様書通りに作っただけだと思うけど。ハルは?」
「ロボットが哲学する滑稽な様を見たかったから、らしい。半分冗談だろうけどな。概ねアタシも仕様書通りだ」
「ボクは知っての通り実験機だけどねー」
「そういや新型ロボットのコンセプトって何なんだ?」
「さあ、ココロの開発はほぼノータッチだったから私も詳しくは」
実質、ココロは三津木さんが一人で作り上げたようなものだ。どんな考えでココロを作ったのかは、ついぞ聞く機会がなかった。
「……で、何の話だったっけ?」
そこで、ココロが言った。確かに随分遠くまで話が飛躍した気がする。
「えーと、ロボットに自由意志はあるか、じゃなかった?」
「神様は機械仕掛けかどうか、だろ」
「……それは別の話じゃないの」
まあ確かに神様が存在するなら、物理主義的には
「神様は自由意志を持つのかなー?」
「完全で全能な存在ならば自由意志は持っているはずだな」
ココロが尋ねてハルが答えた。自由な意志は、多分ないよりあるほうがより完全に近い。なら完全な存在ならば持っていて然るべきだろうか。
そこでふと疑問がわく。
「でも、最善の存在ならすべてにおいて最善の行動を取らなければならないわけで、その意味では自由に意志を決定できないんじゃ?」
「んー、まあそうとも言えるか。ただそんな存在が全知全能で完全な存在者かと言われると……」
「何かアレ思い出すね、石持ち上げるの」
「……誰にも持ち上げられない石を神様は作れるか、っていう奴のことか?」
「神様にも持ち上げられないんでしょ? それ作っちゃったら全能の神ではなくなっちゃうよね」
「……よくわかんないけど、神様も大変なんだね」
私とハルの議論を聞いていたココロが、ポツリと呟く。
「そうだな。神頼みして困らせるのもほどほどにしておけ」
「心についても?」
「まあ、人間の理性で検討可能だと思う間はな」
ハルはそう言って笑うのだった。まあ、神頼みは人事を尽くした後の最後の手段とすべきだろう。そうでなければ、神様にも失礼だろうし。
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