第6話

男が男を組み敷いている。

方や見目麗しい奴であっても、間違いなくそれは「男」なのだ。

そして組み敷いている張本人は俺、おっさんである。


勢いで押し倒してしまったものの。俺は困惑していた。


ヤバイヤバイどうしよう。

今置かれている自分の状況と、先ほどコイツにされたことに困惑する。



桂木は俺の顔を驚いたように凝視していたが、次第に眉間に皺をよせ、不機嫌丸だしの顔に変貌した。



「な、んのつもりですか」

「な、…んのつもりって…」


こっちのセリフだよバカヤロー!


そう言ってやりたいけど、俺の頭はもう相当パンク状態だったらしい。


そんなに俺のことが嫌いか?

キスなんていう、最悪の嫌がらせまでして。

嫌いなら嫌いってはっきり言いやがれ。

でも、だったらなんで。

なんで酔いつぶれた俺を介抱して、家まで送ってくれたんだ?


訳が分からなくなって、情けなくも俺はまたもや泣いてしまっていた。



もはや押し倒した勢いは消し飛び、俺は部下の正面に座らされていた。



「斉藤さん…泣かないで、ください」

「う…なんか…俺、情けな、…ごめ」



恥ずかしすぎる。部下に気を遣わせて…

ようやく落ち着いた俺は、とてもじゃないけれど、桂木の顔が恥ずかしくて見れなかった。


真っ赤な泣きっ面を見せられるわけもない。



「…あなたは、どれだけ可愛いんですか」

「…は?」



空耳だろうか、今、なんて?


そう問おうと、顔をあげると、口元を抑えた部下がいた。

もう、眉間の皺は消えていて、耳がほんのり紅く染まっていた。

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