第2景 新宿で落ち合う

新宿が好きだ。都内で誰かと待ち合わせをするときは、たいてい新宿を選ぶ。


立地がよく誰もがアクセスしやすいし、出発地にも目的地にもなる。どこかに移動してもいいし、しなくてもいい。自由だ。


東口、西口、南口、それぞれの出口で街の様相が変わっておもしろい。どの出口にもそれぞれの空虚さを感じる。どこに行っても人混みから逃れられないのに、生活の呼吸を感じることができない。人も物も、そこにいるだけでお腹いっぱいになるほど溢れているのに、ふとしたときに狐につままれた気持ちになる。


新宿で落ち合うとき、自分の身体が景色の一部になっていくのを感じる。 自分の身体がどこまで溶けるかわからない、スリル。新宿は歯車で、新宿はからっぽ。


新宿が好きだ。誰も自分のことなんて見ていない気がする。

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