第63話 解毒魔法②
……はっ、いかんいかん!
相手は菜々芽、俺の妹なんだぞ!
シェリルの話によると、吸い出した毒は吐き出すのだという。
何かあれだな、ヘビにかまれた患部から毒を血液ごと吸い出すのと似たような治療方法だ。それをイメージしてるから、こんな魔法になったのかもな。
一気に毒を吸い上げた菜々芽が、顔を上げる。
さあ菜々芽、思いっきり「ペッ!」てするんだ。
間違って飲みこむなよー。
ところが、菜々芽がペッと吐き出すことはなかった。
そして倒れたままの俺を見下ろすと、ひと言。
「このクソ兄貴が! 妹のくちづけで感じてんじゃねーぞ!!」
…………は?
あれ? 今の……聞き間違いだよな?
菜々芽がこんな汚い言葉づかい、するわけないもんなーあはは。
「おい聞いてんのか! ボーッとしてんじゃねえぞクソ兄貴!! てめーのことだからどうせ妹のマ
うああああああああああああああああっ!!!!!
「どうしたんだ菜々芽っ!? そんな言葉を使っちゃダメだー!!」
「落ち着けアラタ。これはな、毒を吐いているのだ」
「…………え?」
俺はシェリルの言葉にキョトンとした。
毒を吐くって……え?
でも確かに相手に暴言を言うことを、毒を吐くって言うけど。
まさか……そういうこと?
「これはこの魔法の一貫なのだ。本来の菜々芽にとっては思ってもないことだから気にするな。しかし本来なら少しずつ毒を吸い出すものなのだが、菜々芽ははりきって吸いすぎてしまったらしいな。これは元に戻るまでに時間がかかりそうだぞ」
「……じゃあ、菜々芽はしばらくこのままってことか?」
「ああ、たくさん文句を言わせてスッキリさせてやらないとな」
さあ、とシェリルにうながされる俺。
嫌だけど、すごく嫌だけど、俺は顔を動かして菜々芽の方を見る。
「てめー、いっちょ前に兄貴ズラしてんじゃねーぞ! いっつも偉そうに何かとアタシに教えてくるけどな、そんなの全部ウソだってわかってんだよ! アタシが清純? 無垢? そんなわけねーだろバーカ! 人間なんだから人並みにエロいに決まってんだろーが!! お前の理想を押しつけんなよこのクズ!!」
「な、菜々芽えええええええ――――!! うわあああああ――!!」
俺の心はもはやズタズタだ。
菜々芽がそんなこと思ってないってことはわかってる。
でも、でも……声も顔も菜々芽のものなんだぞ。
こんなの、耐えられるわけないだろおおお!!
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