冒険者ギルド

第51話 受付

 冒険者ギルドの中は、薄暗くてひんやりとしていた。

 何というか、外と違って空気が重苦しい気がする。


「意外だな。もっとにぎやかで暑苦しいかと思ってたのに」


「それは夜だけだ。日中は多くの者がクエストに出てるし、残っているのは今日の仕事が見つからなかった者だからな。暗くもなるだろう」


 シェリルが解説してくれる。

 なるほど、そういうものなのか。冒険者も大変なんだな。


 ちくしょー。こんな感じじゃ俺の期待は裏切られるんだろうなあ。

 ……何がって?

 そりゃもちろん、受付のお姉さんですよ。


 ギルドの受付といえば、美人で巨乳で、何よりオトナの色気がある!

 異世界ファンタジーの定番って言えば、これでガチだろ!

 ん、まあ胸は花梨も大きいけど、子供の頃から一緒だったから、あんまり異性って感じしないし、それにオトナって感じじゃないからなー。


 だから俺は、この街に来たときからずっと期待していた。

 でもこのギルドの雰囲気じゃ、美人のお姉さんなんていなさそうだ。

 むっさい大男か、最悪オネエ言葉を使うムキムキマッチョとかかも……。


「なあシェリル、受付の人って女性だったりしないよな?」


「マスターか? ……女性だが、それがどうかしたか?」


「そうか、やっぱ男だよなあ……って、女性なのか!?」


「別に驚くことではないとは思うのだが」


「胸は? 大きいのか?」


「むっ、……大きい」


「あ、ごめん」


「なぜ謝る?」


「……」


 やべえ、シェリルと険悪なムードになってしまった。

 いや別に俺はその大きいのが好きってわけじゃなくオトナの魅力が好きなわけで胸は小さくても好きっていうかああこれじゃあまるで俺がおっぱいのことしか考えてないみたいじゃないか。確かにそうなんだけど……そうじゃなくて!


 ……反省。

 俺がバカだった。受付の人の性別なんて関係ないだろ。

 冒険者になる手続きが無事できれば、どうだっていいじゃないか。


 そうして俺たちは、奥にあったカウンターの前に到着する。


「あらいらっしゃい。はじめまして、冒険者の登録かしら?」


 メガネの女性が声をかけてくれる。

 ウェーブがかかった美しい髪、妖艶な感じさえする美しい顔、はちきれんばかりの胸、露出度の高い服……こんな美人、芸能人でもいないぞってくらいの美人だ。

 よっしゃあ! 俺の反省は即、吹っ飛んでいた。


 うおおおおおおおおおおおお――――っ!!


 …………お、おお?


 しかし俺の反省は、一瞬にしてリターンバックしてくる。

 メガネがあるものの、その受付の人に見覚えがあったからだ。


「ようこそ冒険者ディルド……ではなくギルドへ。――ぷっ、うぷぷぷっ」


 お前、女神じゃねーか!!

 自分の下ネタに腹かかえて笑ってんじゃねー!!



 ちなみにディルドとは、男性器を擬した張形のことだ。

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