第52話 ギルド登録

「それでは、あなたのお名前を教えて下さい」


「おい女神!」


「オイメガミさんですね。次にあなたの職業を教えて下さい」


「おい女神!」


「オイメガミ……ですか? 残念ながらそのような職はございません」


 淡々と受け答えをしていく受付のお姉さん。

 あれ、もしかして本当に女神じゃないのか? ただのそっくりさん?


「それではアラタ様。職業は真包茎士まほうけいしで、よろしいですね?」


「知ってんじゃねーか!! やっぱお前女神だろ!!」


「ああ、アラタ様は冒険者登録ではなく、手術に来たのですね?」


「真剣な顔でメスを取り出すな! 怖いから!!」


 なんでギルドで手術ができるんだよ……。

 俺はあきれてしまった。


 その途端、ギルド内がざわめいて、みんながこっちに注目する。

 あちこちから「あいつ真性包茎だってよ」「神聖魔法使えるのかな」「神聖魔法は強力だけどかわいそうになあ」「俺もお姉さんに手術されてえ」なんて声が聞こえてきた。違う、俺は真性じゃない。やめて、そんな目で見ないで……。



「ふむ、なるほど。アラタ様はオスがご希望……と」


「そのメスじゃねーよ!!」


 あのさあ、いい加減にBL系のネタやめない?

 ほら、隣で花梨がまた熱心にメモ取り始めてるし。

 つーか、手術って普通ギルドでするもんじゃないよな……?


 そんなことを考えていたら、脳内に女神の声が聞こえてきた。


『アラタメアラタ、空気を読むのです。私は変装をしていますよ?』


 ……変装って、そのメガネのことか?


『今はお忍びで人間のふりをして、受付のお姉さんをしている身なのです。お願いですからどうか知らないふりをしていてください。エロ本拾った小学生を目撃したときのように! エロ本拾った小学生を目撃したときのように!!』


 2回言わなくていから。

 今時エロ本なんて道ばたに落ちてねーだろ。


 そういえば、女神に会ったことがあるはずの菜々芽や花梨も騒いでいない。

 女神の顔の詳細を覚えていないのか、それとも気づかないふりをしているのか。

 ともかく俺1人が騒いだってどうにもならないし、俺は黙っていることにした。


「名前はアラタ、職業は魔法剣士でお願いします」


「では冒険者ランクを調べますので、この宝玉オーブを持ってください」


 へえ、判定に宝玉を使うって、実にファンタジーっぽいな!

 ワクワクしながら、俺はめが……受付のお姉さんから宝玉を受け取った。


 それは、手のひらサイズの小袋だった。


 …………あれ?

 何で宝玉オーブなのに袋なんだ?

 そう思ったのだが、よく見ると袋の中には2つの小さな玉が入っている。


 これ、パチンコ玉だよな。

 

 袋の中にタマが2つ。

 そしてパチンコという名前の響き。



 何か……男にとって大切な、下半身の袋を想像させるような造形なんだけど。

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