第32話 理不尽

 おいおい、シェリルの仲間って花梨のことだったのかよ。

 つーか、花梨が何でこっちの世界にいるんだ?

 いや、それよりも今は……。


 ぎゅっ。


 花梨が俺に抱きついている。

 何でこんなことに? 俺のこと嫌ってたんじゃないのか?

 しかもめっちゃ胸が当たってるし。すごく大きい。

 ……思ってた以上だ。


 しばらく会ってなかった間に、また大きくなったんだなあ……。


 ――って、俺は親戚のおじさんかよ!

 しかもそれを言うなら身長の話だろーが!!


「何やってたのよ! すっごく心配したんだからね!」


「え……? つーか花梨、お前これ……いいのかよ」


「…………? あ……、――――っ!!?」


 ハッとした花梨が、みるみる真っ赤になってババッと俺から離れる。

 俺に指摘されて初めて、自分が抱きついていたことに気づいたようだ。


「な、何よっ!」


「いや、別に……・」


「カン違いしないでよね、このヘンタイ! い、今のはっ、その……・っ、――そう! 菜々芽ちゃんと間違えただけなんだから! 菜々芽ちゃんに抱きつこうとしたら、間違えて隣にいた新太に抱きついちゃったのっ!!」


「ああ、そういうことか。花梨が俺に抱きつくなんておかしいと思ったよ」


「ちょっと! 何で素直に納得してるのよ!!」


「えー……・」


 あれー。何で今、俺怒られたんだろ。理不尽じゃね?

 まあこれでこそ花梨だなあとは思うんだけどさ。


「なるほど、これが恥じらいというものなのだな」


 その横で、シェリルが熱心にメモを取っていた。

 やめてくれ。こんなのが2人になったら俺は理不尽死してしまう。


 恥じらいってさ、もっとおしとやかな女の子が「きゃっ、アラタくんのえっち……」とかやるもんだと思ってたんだけど……。

 シェリルや花梨がそんな風にしてるのって、何やっても想像つかないよなー。

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