再会

第31話 思わぬ仲間

「なあ、アラタはその……リンという人が好きなのか?」


「はあ!? シェリル、いきなり何言ってるんだよ!!」


「うん、お兄ちゃんはリンお姉ちゃんのことが好きだよ」


「菜々芽! ちょっと今は黙っててくれ!」


「えー」


 むくれた菜々芽を懸命になだめる俺。

 菜々芽が言う好きっていうのは、きっと友愛的なものなんだろう。

 ……・あれ? それなら俺がシェリルのことを好きなんじゃないかって言ってたときに、あんな必死こいて否定しなくてもよかったような……。


「ナナメ、そのリンという人はどんな性格をしているのだ?」


「えーと、そうだなあ。あ、すぐに顔を真っ赤にして恥ずかしがるよ!」


「なるほど、恥じらいを持っているのか」


 そうそう、それですぐに俺に文句を言ってくるんだよ。

 他のヤツには何も言わないってのに。とんだ迷惑だよな。 


「ふむ、恥じらいか。わたしにはないものだな……。なあアラタ、わたしに恥じらいがあったら、アラタは嬉しいか?」


「……え? ……まあ、確かに少しはあった方がいいかもな」


「そうか。恥じらい……、恥じらい……か」


 シェリルは本気で悩んでいるようだった。

 俺、そんなに深く考えて言ったわけじゃないんだけどな。

 せっかくシェリルはかわいいんだから、って思っただけで。


 つーか、たぶんシェリルも恥じらいはすでに持ってるんだよな。ちょくちょく顔を赤くしたりしてるし。ちょっと他の人とはズレてるってだけでさ。


 と、そのときだった。

 フードをすっぽりとかぶった人物が、こっちに向かってくるのが見える。

 顔ははっきりと見えない。そして中の服が見えないほどのロングコートを羽織っていた。


「なあシェリル。誰かがこっちに向かってきてるんだけど……」


「ん? おお! あれはわたしの仲間だ! 街に着いたら紹介しようと思っていたのだが、どうやらわたしの帰りが遅いから、むこうから来てくれたみたいだな」


「そっか、他にも仲間がいたのか」


 俺はあることを気にしていた。

 そいつが女なのか、それとも男なのか。

 男だったら……何か嫌だな。――って、俺は何を考えてるんだ!!


「彼女はな、アラタたちと同じ世界から来たんだぞ! しかも昨日に!」


「…………! へー、1日違いか。そいつは偶然だな」


 俺はシェリルが「彼女」と言ったので、心の中で喜んでいた。

 そしてまさか俺たちの世界から来ている人間とは。

 どんなヤツなんだろう。気になる。


 そんなことを考えてる間に、フードの人物はすぐ目の前まで来ていた。


 身長は俺より10センチ低いくらいか。

 スラッとしたスタイルと、ロングコートの上からでもわかる大きな胸。

 歩くたびに揺れてるのがわかるくらいに大きい。

 ああ、これはシェリルが胸のこと気にする気持ちもわかるなあ。


 そしてコートの襟元からは、下に着ている服が少し見えている。


 俺はこう思ったんだ。

 ああ、ちゃんと服は着てるんだ。


 いやだってさ、露出狂の変質者って体をすっぽりと覆うロングコート着ててさ、下がハダカっているのが定番じゃん? シェリルの仲間だし、てっきりそういう恥女でもおかしくないのかなあ、なんて思っちゃってさ。


 決してハダカだったらいいなあとか、思ったわけじゃないんだぞ!

 

 その女性はシェリルに駆けよると、顔を覆っていたフードを取った。


 あらわになったのは、ツインテールの髪にパッチリと大きい瞳。強気な感じの表情――――って、あれ? この顔…………。

 

 

「シェリィ、遅いから迎えにきちゃったわよ!! ――って、新太!?」

「え、ちょ……・っ!! 何で花梨がここにいるんだよ!!」

「よかった!! 生きてたのね……っ!!」


 フードの少女は、いきなり俺に抱きついてきた。

 その勢いで、ロングコートがハラリと地面に落ちる。

 

 彼女の服装は――高校の制服。しかも俺の高校のと同じものだ。



 彼女は三重野みえの花梨かりん

 さっき菜々芽が話していた「リン」――俺の幼なじみだ。

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