第30話 幼なじみ

 超巨大型おっぱいマウスパッドは、役目を終えるとボワンと消滅した。

 シェリルとは……ちょっと気まずい雰囲気。


 そこに菜々芽が駆けよってくる。


「お兄ちゃああああーん! ケガしてない? だいじょうぶだった?」


「ああ。シェリルのおかげで何ともないよ」


「あれ、あたしの魔法だよね? 何で出ちゃ――むぐっ、たんだろう」


 セーフ!

 出ちゃうはヤバい!


「気にしなくていいよ。菜々芽の魔法は、コントロールが難しいらしいんだ」


 ごめんな。

 魔法が出た本当の理由は教えてやれないんだ。

 菜々芽の発言がエロい言葉なんだって、教えるわけにいかないし。


 と、シェリルが菜々芽を励ますように話しかける


「ナナメ、街についたら店に行こう。魔法の暴走を防ぐアイテムが売っているはずだ」


「ほんと!? やったー、かいものだー!」


 喜んだ菜々芽がシェリルに抱きつく。

 申し訳なさそうな菜々芽の顔は、もうすっかり消えていた。


「そういえばお兄ちゃん」


「ん?」


「今出てきたマウスパッド、すごく胸が大きかったけど、胸が大きいって言うとリンお姉ちゃんを思い出すよねー」

「……・! ……・まあ、そうだな」


 菜々芽が言ったリンとは、俺の幼なじみのことだ。

 隣の家に住んでいて、俺や菜々芽と家族ぐるみでの交流があった。


 あいつ、今ごろどうしてるんだろうな。

 俺はふと、現実世界が今どうなっているのかを考えてしまう。


 俺の家が隕石につぶされているのを、あいつは見ただろうか。

 あいつ、俺が下敷きになってるって知ったら、どう思うかな。


 ……いや、どうも思わないか。


 もう俺のことなんて、害虫のようにしか思ってないだろうし。


 確かに昔は仲が良くて毎日のように遊んでたんだ。

 でも、いつからか何をやっても文句を言われるようになり、そのうち登校は別々になって、あいさつすらしなくなって、今では目を合わすことすら滅多にない。


 きっと、もう嫌われてるんだと思う。

 まあ、異性の幼なじみなんて大抵はそうやって、理由もなく疎遠になっていくものかもしれないけどな。

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