第11話 そうび・巫女服

「わたしはシェリル。魔王を倒すために冒険者をやっている。職業は巫女、種族は見てわかる通り――エロフだ」


「え、今何て……?」


「エロフだ」ドヤッ。


 えっと……エルフじゃないのか。

 見た目どう見てもエルフなんだけどなあ。

 どう反応していいかわからず、俺は自己紹介を続けることにした。


「俺は改目荒太。えっと……信じてもらえないかもしれないけど、こことは別の世界から来たんだ」


「ほう……つまり、女神様の祝福を受けて来たのか?」



 お、信じてくれてる。

 つーか、あの女神のこと知ってんのかな。

 とても祝福って言えたもんじゃなかったけどな。



「アラタ、この世界にはこのような言い伝えがある。異世界からの使者は救世主になるだろう、とな。どうだ、よかったらわたしとともに、魔王を倒す旅に同行してくれないか?」


「うーん、そうだな……。そういや女神にも、魔王を倒せって言われてたんだっけ。助けたくれた恩もあるし、結局これからどうしていいかもわからないからな。よし、一緒につれてってくれ!」


 俺がそう言うと、シェリルは右手を差し出してくる。

 表情は大きく変わらないが、長い耳がひょこひょこと動いていた。

 えっと、喜んでくれてるって思っていいのかな。


「アラタ、これからよろしく頼む」


「ああ、こちらこそ」


 俺はしっかりとその手を握った。

 女の子らしい、小さくてやわらかい手だった。

 仲間……か。正直言うと、ちょっと嬉しかったりする。

 俺、今までぼっちだったからな。



 シェリルとの握手が終わると、菜々芽が会話に入ってきた。


「ねえねえ、シェリルちゃんって巫女さんなんだよね」


「ああ。主に防御系魔法が得意だぞ。攻撃魔法も少し使えるが」


「うわあ、魔法だなんてすごいね! でも巫女さんって和服じゃないんだ」



 シェリルは、純白の法衣――西洋の聖職者のような服装だった。

 まあこういうゲームっぽい異世界って和洋折衷だし、アリなんじゃないか?

 俺がそんなことを考えていると、シェリルが顔を赤らめていた。



「実はな、それには理由があって……その、和服はパンツをはけないだろう?」


「そんな理由なのか!? ……でもまあ、そりゃ恥ずかしいか」


 なるほど、だから純正の和服じゃないのか。

 でもこれまた、ずいぶんと古典的な考え方をしてるんだな。

 確かに昔はそれが日本の常識だったのかもしれないけど、今は下着はいてもいいのが当たり前になってると思うし。やっぱり俺たちの世界とは常識が違うのかもな。


 それにしても、恥じらっているシェリルの様子は、なかなかかわいい。

 こうして見ると、けっこう普通の女の子じゃないか。

 ナプキンで堂々と魔法なんか使ってるし、さっきは下ネタ言ってたし、てっきり恥じらいとは無縁の性格なのかと思ってたけど。



「アラタ、何かカン違いをしていないか?」


「え? 下着をつけたいから和服は着ないってことだろ?」


「わたしは別に、パンツをはきたいわけではないのだぞ?」


「へ……?」


「パンツなしが当然では、パンツをはかない興奮が薄れてしまうではないか」



 シェリルは長耳をへにょっと曲げて、ほほを赤らめている。





 あれ……?





 ってことは……つまり今ノーパンってこと!?

 あえて下着をつけてない状況を楽しんでいるってこと!?


 うわーい、ぜんぜん普通の女の子じゃなかったー!!

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