第12話 はじめてのけいけん

 ノーパン。


 ノートパソコンの略じゃなくて、普通にノーパン。

 本当に今、シェリルはノーパンなのだろうか。

 気になって仕方がない。




 そんな風にソワソワしている俺に、菜々芽が話しかけてきた。


「ところでお兄ちゃん。夢精ってなあに?」


「え゛……っ!?」



 こ、これはマズい。お兄ちゃん最大のピーンチ!

 ここは良識ある兄として、模範的な解答をしなければ……っ!


「えっとな……そう! 夢精っていうのはな、夢の妖精さんのことなんだ。水の精とか木の精とかいるだろ? あれの夢バージョンって感じ」


「ふーん……?」


 菜々芽がジッと俺を見ている。

 うむむ、これはさすがに苦しい嘘だったか……?



「さっすがお兄ちゃん! 何でも知ってるね!」


「そ、そうか? そうだな、あはは、あははははっ!」


 菜々芽が尊敬のまなざしで俺を見ている。

 無事ごまかせたようだが、うっ……罪悪感が。

 それでも本当のことを教えるわけにはいかない。

 何があっても、菜々芽には無垢でいてほしいのだ。


 菜々芽は現在小学6年生。性の知識を得るにはまだまだ早いお年頃。

 テレビやネットなど、世の中には性に関して悪影響を及ぼすものがあふれかえっている。そういうものから守るのは、兄である俺の役目なのだ。


 過保護すぎる? もう小学6年生だ?

 そんな意見は却下却下却下だ!

 シスコンでもいい! 純粋に育ってほしい!

 菜々芽からは、何としてもエロを遠ざけなければいけないのだ!!




 俺がそんなこと考えていたら、菜々芽が笑顔でのぞきこんでくる。



「ねえお兄ちゃん。あたしも夢精、見てみたいなあ」


「――何ですと!?」


「夢精、いっぱい出たら嬉しいのになあ」



 だ、ダメだ菜々芽!

 無垢な顔でそんなこと言わないでくれぇぇぇぇっ!


 菜々芽はうっとりとしていた。

 目の前に出てきたたくさんの妖精を想像しているのだろう。

 それが何だか余計にエロい感じがして「だったら今から見せてあげよう」と言ってしまいたい欲望にかられてしまう。……いやいや、それはいかんぞ俺っ!!

 



 と、そのときのこと。




 ちゅどおおおおおおおおおおおおお――――ん!!





 窓の外、遠くから爆発の音が聞こえてきた。

 相当大きな爆発だったようで、煙が大量に上がっているのが見える。

 そして俺の目の前に、まるでロープレのようなメッセージウインドウが現れた。



【ななめは100000000のけいけんちを得た!】




 ――――は? いきなり何だよ。




 ちゃらららちゃーらっらー♪

【ななめはレベルが上がった!】

 ちゃらららちゃーらっらー♪

【ななめはレベルが上がった!】

 ちゃらららちゃーらっらー♪

【ななめはレベルが上がった!】

 ちゃらららちゃーらっらー♪

【ななめはレベルが上がった!】

 ちゃらららちゃーらっらー♪

【ななめはレベルが上がった!】

 ちゃらららちゃーらっらー♪

【ななめはレベルが上がった!】

 ちゃらららちゃーらっらー♪

【ななめはレベルが上がった!】

 ちゃらららちゃーらっらー♪

【ななめはレベルが上がった!】

 ちゃらららちゃーらっらー♪

【ななめはレベルが上がった!】

 ちゃらららちゃーらっらー♪

【ななめはレベルが上がった!】

 ちゃらららちゃーらっらー♪

【ななめはレベルが上がった!】

 ちゃらららちゃーらっらー♪

【ななめはレベルが上がった!】

 ちゃらららちゃーらっらー♪

 …………。





 え……? 何コレ??? つーかいつまで続くの……?

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