第8話 いざ覚醒

 次の瞬間、俺は薄暗い森の中に立っていた。

 ここが異世界……なのか?




 まず自分の格好を見る。

 さっきと同じジャージ姿で、俺はホッとした。


 あの女神のことだから……ダダンダンダダン! シーモネーター! なんてどっかの昔の映画みたいに、俺を裸にしておくんじゃないかと思ったけど、どうやら杞憂に終わったらしい。



 さて、どうするかな。

 女神は街を目指せって言ってたけど……とりあえずは森を抜けてみるか。


 これからどんな冒険が始まるのだろうか。

 俺の胸は自然と高鳴っていた。


 適当に歩き始めると、思ったよりあっさりと森の外に出ることができた。




 目の前には見渡す限りの大草原。

 そして――全長2メートルはある鳥型モンスターが動き回っていた。


 すげえぞ、モンスターだ!!

 こんなでっかい鳥、初めて見た!!



 ここ……本当に異世界なんだな。


 そして鳥型モンスターは、ひとりの少女と今まさに戦いを繰り広げていた。


 ストレートの長い髪をなびかせているその少女は、俺と同じくらいの年齢で、聖職者風の白い法衣を身にまとっている。

 神秘的で美しく、魔物に臆することのない凛々しい表情をしていた。


 そして驚くべきは、彼女の耳だ。

 ツンととんがって、上に長く伸びているではないか!

 これ、エルフじゃね? すげえええええ、エルフだあああ!!


 エルフっていうと、高貴で気高く美しいあのエルフだよなあ。

 胸はひかえめだけど、その分とてもスリムで美人だし、間違いない!!

 異世界に入ってすぐエルフに出会えるなんて、まるで最近のラノベじゃねーか!!

 何っつうラッキーだよコレ!!



 モンスターが翼をはためかせると、かまいたちのような風の刃が何本も出現する。

 何となくだけどわかるぞ。

 この刃は……触れたらただじゃすまない。


 そしてすべての刃が次々と、少女に向かって放たれた。


 ――――っ!! このままじゃ、彼女の身が危ない!!

 俺はとにかく夢中で走り出すと、少女をかばうように前に立つ。



「…………えっ!?」



 少女は驚いた表情で俺を見ている。

 だいじょうぶだ。そんなに心配しなくていい。

 安心してくれと言わんばかりに、俺は少女に笑顔を向けていた。



 迫りくる風の刃。だが問題はない。


 なぜなら俺には、女神が言っていた才能が眠っているはずなのだから。

 覚醒するとすればここしかない。

 まさに……絶交のシチュエーション!




 ――俺の中の力よ、目覚めろ!!




 俺は手のひらを前方に突き出した。




 だが――何も起こらなかった。


 風の刃はそんな俺に構わず、目の前まで迫ってきている。



 あれ……? 覚醒しないの……? 




 嘘だろ。

 これ……やばくね?

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