第7話 やっと気づいた

「アラタ、今からあなたは魔法剣士として生まれ変わりました」


「よっしゃああああ! ……って喜びたいところですが、別に変わったところはないようなんですけど」




 ロープレでのキャラメイクや転職は一大イベントのはずなのに、今の俺にはそんな実感はまるでなかった。

 力が強くなった気はしないし、外見や服装も同じままだ。



「すぐにわかりますよ。アラタの才能がいかに素晴らしいかが」


「まあ、確かにそういうもんかもしれませんね」



 どんなゲームの主人公だって、最初は弱っちいものだ。

 地道にレベルを上げていけば、剣も魔法も強くなっていくだろう。

 フフフ……。食らえ、俺の魔法剣! ってな。



 そんなことを考えていたら、女神がいきなり自分の胸を押さえる。



「あァん、ヤられてしまいました」


「明らかに悲鳴がエロすぎだろ。それより、さっきからずっと思ってたんですけど、女神様は俺の心が読めるんですか?」


「もちろんです。わたしの特技ですから。人の心も、その場の空気も、官能小説でさえも読みますよ?」


「最後はいらないです。せめて世界の情勢でも読んで下さい」


「えー、官能小説は世界より大事ですよ。わたしはせいなる女神ですから」


 世界よりエロかよ……。

 この人、本当に世界救う気あるんだろうか。


 いやいや、下手なことを考えない方がいいな。心読まれてるんだし。

 よーしがんばるぞー。俺、世界救っちゃうもんねー。



「すべて聞こえてますが、それでもありがとうございます。ではアラタ、さっそくあなたを新たな世界へと送ります。すべてはあなたの手にかかっていますので、頑張って下さいね」


「まあ、できるだけやってみます」


「うふふふ、いっぱいヤるのですよ。では、イッてらっしゃい」


「――――うおっ! 落ちるっ、うわあああああああ……っ!?」



 やるの単位がいっぱいなのはおかしいだろ。

 そうツッコむ暇もなく、いきなり俺の足下の地面がなくなった。



「アラタ、まずは街を目指すのです。魔王を倒すための拠点を探しなさい」


「うああああああああああ……っ!!」



 俺は悲鳴を上げながら、真っ暗な空間をグングン落ちていく。

 すぐに女神の姿は見えなくなった。



 そしてこのとき、俺は今さらにして、あることに気づく。



 せいなるって――――






 もしかして、性なるって意味じゃねーのか!?

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