第5話 逝きました

「アラタ、もう一度言います。あなたは15歳にして、その尊い命を終えました」


「だから何言ってるんですか。現に俺は、こうしてピンピンしてるでしょう」


「覚えていないのですか? 隕石が衝突したときのことを」


「だから――って、隕石? え……? あれ、そういえば……?」



 俺は、つい先ほどのことを思い出す。


 気持ちのいい朝だった。

 目が覚めた俺は、まずベランダに出て空を見上げた。

 すると俺の家に向かって、まるでピンポイント爆撃のように巨大な隕石が迫ってきて、轟音とともに家ごと押しつぶしたのだ。




 そして次の瞬間、俺はここにいた。



「じゃあ、俺は本当に……?」


「はい。アラタは先ほど昇天したのです。つまり――イッたのです!」


「……その表現、やめてくれませんか?」


 合ってるけど違う意味に聞こえるし。

 つーかわざと言い間違えただろ。ドヤ顔うぜえぞ。


 だが、とりあえず現状はわかった。

 ……そっか。俺、ほんとに死んだんだな。

 隕石が降ってくるなんて実際にあんのか。


 ったく、何て運が悪いんだ、俺は。



「これから俺、どうなるんですか? ここがあの世ってことなんですか?」


「いいえ、ここは天国の手前です。アラタ、あなたはまだ完全には死んでいない状態なのです。若くしてその命を終えるのは惜しい。よかったら、もう一度別の世界でその命をやり直しませんか? あなたには才能もあることですし」


「才能……? でも俺、自分で言うのも何だけど、引きこもりの底辺クズですよ?」


「はい、その通りです」


「ちったあフォローしてくれよ! もう死にたい!」


「死にたいのですか? では残念ですがあなたの命は天国に……」


「待て待て! 死にたくない! もう一度やり直したいです!」


「そうですか。わかりました」




 うわ、あぶねー。完全に死ぬとこだったぜ。


 この女神、いつもにこやかで表情が変わらないもんだから、冗談か本気かわからないときがあるな。気をつけないと。


 つーか、これってさ、最近よくある転生ってやつじゃないのか?


 さっき別の世界とか言ってたし、ファンタジーっぽい世界なら俺に才能があるってのも納得だ。俺、ゲームやりまくってるから、そういうのには耐性あるしな。




 ……うお、ちょっとワクワクしてきたぞ。

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