第4話 夢じゃない

 つーかさ、もうこれ夢だろ。そうに決まってる。

 

 翼が生えた人間も、

 真っ暗な不思議空間も、

 美人の口から出る下ネタも、


 夢ならぜーんぶ、説明がつくもんな。



「あらあら、これは夢ではありませんよ」


「そんなこと言ったって、信じられるわけないでしょうが」


「だったら、これでどうですか?」



 女神とやらが俺に近づいて、体を寄せてくる。

 すぐにでも抱きしめられてしまいそうな距離。

 ウェーブがかかった髪からほのかな甘い匂いがして、俺の心臓が自然と高鳴った。


 えっ? 何これ、どういうこと……?



 彼女がそっと、俺の胸に手を置く。

 そして――俺の乳首をキュッとつねった。


「えいっ」


「痛たたーっ! あー痛いなー、確かに夢じゃないなー」


「うふふ、でしょう?」


「笑ってんじゃねーよ! 俺の棒読み聞いてました!?」



 やるならちゃんと頬にやってほしいもんだ。

 そしてムダにドキドキさせないでほしい。


「あなたも女神を名乗ってるんなら、下品なことはやめてくださいよ」


「あ……もしかして、乳首感じやすいんですか?」


「う、うるせえ!」



 真っ赤になってしまう俺。

 女神とやらは、そんな俺に満面の笑顔を向けている。


 ほんと何これ。

 夢じゃないなら、いったい何が起こってるっていうんだよ。

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