ターン17「うわさおばさん」
「聞いたよ。聞いたよ」
ある日のこと。
村の通りを歩いていたら、ぼくは、おばさんに呼び止められた。
この人は「うわさおばさん」と呼ばれている。
いつもおしゃべりに花を咲かせている人で、うわさ話が大好きな人。
わるい人じゃないんだけど……。ぼくはちょっと苦手。
「マイケルが。カエルになっちまったんだってね?」
うん。そう。
ぼくもカエルになったけど。
あれ? そっちの話は、うわさになってないのかな?
「それで大変だったんだってー? 教会のユリアちゃんに悪さしたり、猫とケンカして追いかけられたり、ロッカちゃんのところの薬草をパクってみたり、さんざん、ワルさしていたんだってー?」
マイケル。ずいぶんな大冒険だったね。
でもトモダチとして弁護させてもらうと、薬草を盗んだのは、きっと猫に追いかけられて怪我したのを癒やすためだったと思うな。
ロッカは動物と話ができるから、カエル語もわかるはずで――。きちんと話して、きちんと許してもらえているのだろうし。
「それで、アネットちゃんに食べられちゃいそうになったところを、フローラちゃんにかばってもらって、人間に戻してもらったんだってねー」
うん。だいたい。そんな感じ。
「ところで、カエルって、おいしいのかね?」
その質問をぼくに振られると、ちょっと返答に困るんだけど。
「あたしゃ、食べたことないんだけど」
うわさおばさんは、じーっと、ぼくを見つめてくる。
食べられないよ? もうカエルにはならないよ? 食べられて、あげないよ?
「……で。聞いたよ。聞いたよ」
うわさおばさんは、ずいっと身を乗り出してくると、声をひそめて、そう言った。
本題に入った模様。
「フローラがマイケルと、ちゅーしていたんだってね」
どっちかっていうと、その逆で――。
マイケルがフローラに頼みこんで、ちゅーさせてもらえていたっていうか――。
でも、ちゅー、っていっても、おでこにだったよね?
「ねえねえ? ほんとなのかい? あの二人、ちゅーしていたのかい?」
女の子って、そういう話、好きだよね。
うわさおばさんが、女の子のうちにはいるのかどうか、よくわかんないんだけど。
「ねえねえ? どうなんだい? ちゅーしていたのかい?」
うーん……?
ぼくは腕組みをして考えこんだ……。
おでこは、ちゅーに入りますか?[はい/いいえ]
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