→いいえ

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 うわさおばさんに対して――。

 ぼくは、「ううん」と、首を横に振った。


 おでこにちゅーは、ちゅーのうちには、入らないよねー?


 おばさんは、あからさまに、がっかりした顔をした。


「なんだいなんだい。ちがうのかい。まったく誰だい。そんな無責任なウワサを言って回っているのは」


 おばさんじゃないかな。


「じゃあ。二人がちゅーしてるところを見つけたら、ちゃんとあたしに言うんだよ。ぜったいにお言いよ?」


 うーん……。

 ぼくは腕組みをして考えこんだ……。


 もし二人が、ホントの〝ちゅー〟をしているところを目撃してしまったとしても、……。

 たぶん、言わないよね?


 ここは、うん、って言っておけば、おばさんは放してくれそうだ。

 でも嘘をつくのもなぁ……。


 ぼくは、「ううん」と、首を横に振った。


「なんだい。おばさんにはヒミツかい。ひどいやつだね。おばさんの唯一の楽しみを奪うなんてさ」


 そうなんだ。唯一の楽しみなんだ。


「まあ。あんたならそう言うだろうと思ったさー。あんたがトモダチ想いなのは知ってるさねー」


 意外なことに、おばさんは、ぼくを解放してくれた。


 ぼくはふたたび歩きはじめた。

 今日はどこに遊びに行こうか。

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