ターン13「リリーとカエル」
ぴょんこ。ぴょんこ。
鍛冶屋をあとにして、ぼくは、村の中を、カエル飛びで移動していた。
そろそろ人間に戻りたいんだけど。
もうカエルの大冒険は充分なんだけど。
キサラのところに向かおうとしているんだけど。
魔法屋は村の反対側にあるので、カエルの一歩が数センチのジャンプでは、なかなか、辿り着かない。
ぴょんこ。ぴょんこ。
そうこうするうちに、なんだか、カラダが乾いてきた。
皮膚がぴたぴりと突っ張る。
そうか。
カエルなんだっけ。もともと水の生き物だ。
水。水。水はどこだ?
水を探さないと、ヤバいんじゃないの? これ――?
キサラの魔法屋にまっすぐ向かわず、ちょっと左に――西のほうに進んでいった。
そっちには池がある。まんなかに小島の浮かぶ、そこそこ大きな池があるのだ。
5歳のときから、もう7年も住んでいる村だから、よく知ってる。
◇
カラダがパリパリになって、干物になってしまう前に――。
なんとか池に辿り着いた。
ぽちゃん、と、飛びこんだ。
ふー。生き返るー。
カエルとしての幸せが、カラダの表面から染み渡ってゆく。
いけない。このまま。カエルになっちゃいそう。
あの虫、美味しそうだなー。
――とか思って、飛んでる虫を見ている自分がいる。
池の中を、すいー、すいーと、泳ぎつつ、カエルとしての幸せを満喫していると――。
「ああ。この子でいいや」
――とか、そんな声が聞こえてきて、ぼくは水の中からすくいあげられた。
え? あれれっ?
「キミ。ちょっと手伝ってくれるかなー」
メガネで三つ編みの女の子が、手のひらの上に、ぼくをのせて、にっこりと微笑んできている。
リリーだ。
いつも〝発明〟に没頭している、変わった女の子だ。
村のみんなからは〝変人〟扱いされているけど、ぼくはそうは思わない。リリーはとっても頭のいい子だ。物事に夢中になると、話しかけられたことにも気づかなかったりする。
そういうところが〝変〟って言われるところだけど。ぼくだって、薪割りに霧中になって、気づいたら、ものすごい山を作っちゃっていたりするから、わかる気がする。
わかるんだけど……?
池の中からすくいあげられたぼくは、小島の島に建つ、リリーのおうちに連れて行かれた。
リリーは〝けんきゅうじょ〟と呼び、皆は〝池のなかのへんなおうち〟と呼ぶ一軒家だ。
ところで――。
なんで、ぼくは捕まえられたのだろうか?
リリー。なんて言ってたっけ?
ええと……。たしか……。
「キミに手伝ってほしいんだー」
テーブルの上に、ぼくを置いたリリーは――またそう言った。
手伝えることだったら、手伝うけど。
でも、リリー……? ぼくがカエルになっていること、気づいてないよね?
ここにいるカエルは、ぼくじゃなくて、本物のカエルだと思っているよね?
いったいなにを手伝うんだろう。
テーブルの上で、おとなしく待っていたら――。
彼女は、なにか金属の道具を、がちゃがちゃとたくさん持ってやってきた。
「ちょお~っと実験させてくれる~」
え?
ニコニコと微笑むリリー。
その手にあるのは――。
刃物、刃物、ハサミの親玉、針のついて液のはいってるガラスの筒――。
あとは――。ドリル、ドリル、そしてドリル――。
リリーは、にこにこと微笑んでいる。
実験させてあげますか? [はい/いいえ]
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