→はい
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ユリアさんの背中を登っていたぼくは、シスター服の襟のところから……。
入った。
正確に言うと……。落っこちた。
「き……!? きゃあああああ!! きゃあ!! あああああ!! 入った! 入ってきたのおほほほほほおおぉぉぉ! ねとねと! ぬめぬめ! いやああああああ!!」
悲鳴というよりは、もっと野太い――雄叫び? みたいな声をあげて、ユリアさんが暴れまわる。
服の中に落っこちた、ぼくは――なにがなんだか、よくわからない。
とりあえず、いい匂いがする。それだけはわかる。
「げこげこげげげーっ!!(ちがうだろ! 前だ! 前に回れーっ!!)」
服の中で薄暗くてなにも見えないが、マイケルの声が聞こえる。
前ってどっち? こっち? そっち?
落ちたのは背中側だから――たぶん、こっち。
動き回っていると、二つの大岩くらいの物体に出くわした。
ちがった。こっちがカエルのサイズだから、大岩に思えるだけか。
だとすると、元々の大きさは、どのくらいなのだろう。
とりあえず、振り落とされないように、その二つの大岩に、しっかりと掴まった。
こういうとき、カエルの手って、吸盤がついてて――とても便利。
「きゃあああああ! む――ムネええ! みずかき! ぴとって! きゃあああ! きゃあああ!」
ユリアさん。ふだんは優しくて大人な雰囲気のお姉さんなんだけど……。
こういうときには、大声で叫ぶんだね。
ふたつの膨らみを足がかりにして、ぼくは、なんとか、胸元から顔を出した。
「げこ!」
ユリアさんの綺麗な顔は、すぐ目の前にあって――。
顔中が、ひくひくと――痙攣していた。
「げこげこっ!(ユリアさん! ぼくたちカエルになっちゃって――! もとに戻――)」
「いーやーーーーー!!」
掴まれた。投げられた。
ぼくは星になって、鍛冶屋のほうへと吹っ飛んでいった。
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