→いいえ
「え? あっそ。戻さなくていいって? ふぅん……」
キサラはそう言った。
そのの目が、すうっと、冷めてゆく。
いつもクールなキサラの目が、ふだんよりも、ずっとずっと冷めてゆく。
「あんた――、友達思いなのが、いいところだと思ってたんだけど……。意外とそうでもなかったのね。マイケルと一緒にカエルになって、反省しなさい」
キサラは細い手を上に振りかざす。
そして――。
「カエルになっちゃえーっ!!」
周囲が急に大きくなっていった。――いや! 自分が小さくなっているんだ!
キサラが立っている。足元から見上げる彼女は、もの凄く大きく見える。
「ふんっ!! しばらくそうやって! カエルになって生きてなさい!!」
キサラは行ってしまった。
「げこげこ」
ぺち、と、隣のカエルが、背中に手を置いてきた。
なぜかそのカエル語がわかった。
「げこげこ(女は難しーよな)」
[はい]
「げこげこげこげー(こうなったら仕方ないぜ。カエルとして生きてくか)」
[いいえ]
「げこげこげ(そんなこといったって仕方ないぞ。諦めろよ)」
マイケルは順応が早かった。
こっちは、巻きこまれただけなんだけど……。
マイケルは、もうちょっとカエルのままでいたほうがいいと思っただけなんだけど。
だいたい、キサラが怒っていたのだって、もともと、マイケルがウソを言ってたからで……。
好きな女の子なんて……、いないよ?
だって、好きとか、よくわかんないし……?
「げこげこげこ(おまえ。カエルになると、いっぱい喋るんだな)」
あれ? 言ってた?
「げっけっけ(じゃあ行くか。おれ。いいところ知ってんだー)」
「げこっ(どこへー?)」
ぼくはぴょんこぴょんこ跳ねて、マイケルのあとについていった。
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