ターン6「マイケルとフローラ」

「きょうはさー、どこいこうかー?」


 今日もマイケルに連れられて、村の中を歩く。

 ここんとこ、毎日、太陽が真上にくる時間になると、マイケルが遊びにやってくる。


 マイケルはヤギの乳しぼりをサボるためだからいいけど……。

 こちらはマイケルが来る前の、早いうちに薪割りの仕事を終えておかないとならないから、けっこう、たいへん。


「カイン。おまえはさー? なにがいいー?」


 うーん……。

 考えた。

 探険できるのとか? 冒険できるのとか? なんか集めるのでもいいし。生き物とか石とか。


「最初は、キサラだろー。まほう屋の子な。ツンツンしているやつな。ぱんつ白いやつな」


 いや。ぱんつはしらないけど。


「――つぎは、マリオンだったろ。かじ屋の子な。チカラもちのやつな。リボンが青いやつな」


 リボンしてたっけ? 青かったっけ?


「つぎはユリアさんな。教会のねえちゃんな。黒いんだ」


 なにが?


 てゆうか。女の子ばっかだよね。

 今日はなにしよう? ――って、そっちの話だったんだね。


「あと、この村で残ってる、めぼしいのは……。そうだなー。猟師の子だろー。池の島のへんじん女だろー。あと、薬草つんでるビンボくさい女と……。まあ、そのくらいだなっ」


 だから女の子の話ばかりだよね。遊びにいこうよ。


「あー! まいけるー!」


 村のまんなかを歩いていると、噴水の近くで、女の子に声を掛けられた。



「まいける、どこいくのー?」


 女の子は歩いてきた。空色の服に金色の髪。おでこが広くて、目がぱっちりとした女の子だった。


 マイケルがどんどん歩いていってしまうので、袖を引いて、呼び止めた。

 ほら。ねえ。マイケル。女の子いたよ? いるけど?


「まいけるー。どこいくのー。あたしもいくー」


 マイケルは振り向かずにどんどん歩く。

 ねえねえ。ねえったら。


「まいけるー。まいけるー」


 女の子と二人で、マイケルについて歩く。


「あーもー! ついてくんなよ! フローラ!」


 マイケルはようやく立ち止まると、ようやく振り返って、女の子に言った。


「ねえ。マイケル。このこ。だあれ?」


 女の子が、ぼくを見て言う。

 ぼくも女の子を見て、思う。


 この子だれだろ。

 マイケルは、村には、あと女の子は三人って言ってたけど……。この子はそこに入っていないっぽい。

 おない年ぐらいに見えるんだけど。


「こいつは。カイン。おれの……その、ダチだ!」


 マイケルが女の子に紹介してくれる。


「あたし。フローラ。よろしくねっ」


 女の子は明るく笑った。

 うん。こちらこそ。


「あー! あたしもいくー! あそぼうよー!」

「ばーか! 女はだめだー! ばーか! 男だけの遊びだー! いくぞカイン!」


 マイケルは走り出した。

 走って行くマイケルと、残された女の子を、交互に見て、ちょっと迷ったけど、マイケルを追うことにした。


    ◇


「まいたか? もうついてきてないか?」


 はあはあと息を切らしてマイケルが、言う。

 木の幹の陰から、そーっと覗いて、しっかりと確認している。


「あいつはー。だめだぞ。……ちょっとカワイイかもしんないけど。性格がだめだ。すぐ――おれのあとついてくんだ! それで、まいける! あーしなさい、こーしなさい、とか、うるせーんだ。カアちゃんよりうっせえんだ」


 しっかりしていて、いいと思うんだけど。


「それはだめ、あれはだめ、ぱんつはもっとだめ、とか、おれのあとついてきて、あれこれ言うんだ」


 いい子だと思うけどー。あと。ぱんつはだめだと思うよ。


「とにかく、だめだ。あれはやめといたほーがいいな。うん。ぜったいだ」


 マイケルは腕組みをした。


「とにかく、だめだ。フローラは、だめなんだ」


 なんで「だめ」っていうのか、なんとなくわかった。

 女の子のところに、いっぱい連れて行ってくれるのに、フローラだけは紹介しない、その理由は……。


「おい。わかってるか? カイン? フローラは、だめなんだからな? わかってるな?」


 [はい/いいえ]


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