→はい

 ・

 ・

 ・

 [はい]


 試しに、薪を割ってみた。

 斧を抜くのは大変だった。斧は重かった。両手でようやく持ちあげて、下ろしてみるが、最初はうまく木を割ることができなかった。

 でもコツを覚えてきたら、だんだん、上手に割れるようになった。


 面白くなってきて。楽しくなってきて。

 ぱっかん。ぱっかん。夢中になって割りつづけた。


 ぱっかん。ぱっかん。ぱっかん。

 ぱっかん。ぱっかん。ぱっかん。ぱっかん。


 ……は、と気がついたら、凄い量の薪が積みあがっていた。

 あれだけ積み重なっていた木が、ぜんぶなくなっていた。

 ぜんぶ薪に変わっちゃってる。


 ……割り過ぎちゃった?


 こんなたくさんの薪、どうしよう? ……と思っていたら。


「ねえあんた? 薪割りの爺さんの、お孫さんかなにかかい?」


 [いいえ]


「え? 親がいないのかい。ふむふむ。村長にここに住めって言われたって。ああそうなのかい。ならずっといるといいよ。ここはいい村だよ」


 それはわからないけど。ありがとう。


「ところでその薪。すこしオバさんに分けてくれると助かるんだけど。薪割りの爺さんが亡くなっちゃったからねえ。薪がなくて困ってたんだよ。すこし、いいかしらね?」


 うん。いいよ。

 割り過ぎちゃって、どうしようかと思っていたところ。

 どんどん持っていってください。


「そうかい。そうかい。ありがとうね。ありがとうね。助かるよ」


 おばさんは、こっちが恐縮してしまうくらい感謝を向ける。

 とても困った。夢中で斧ぶんぶん振り回していただけだから。

 でも嬉しかった。

 こんなに感謝されたの、……はじめてかも?

 なにも覚えてないから、わからないんだけど。


「皆にも知らせておくよ。新しい薪割りの人ができたってね。ピチピチのかわいい坊やだってね」


 最後のところは余計だと思ったけど。

 うん。まあ。おしごと……。薪割りで、いいかな。

 よろしくおねがいします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る