第4話

研究室に入ると田原教授が待っていた。入口右手に小さくて古いソファとテーブルがあり、左手には机が縦に3つずつ、向かい合わせで2列並んでいる。壁の棚にはファイルや書類が所狭しと並んでいて、机上もパソコンの周りは書類とファイルが雑多に置かれてある。隅に置いてあるホワイトボードにはたくさんのメモが残っていて、いかにも雑な印象があった。


「今日は暑い中どうも有難うございます。」

「いえ、とんでもありません。大変興味深いご研究、楽しみにして参りました。」


簡単に検査の方法が説明された。検査はMRIを使用するので、別の部屋になる。

これまでの結果について雑談を交わした後、質問をぶつけてみた。


「田原先生、ってことは基底核という所を鍛えれば直感力が上がると」

「そうですね。基底核は野生の脳とか言われてますけども、鍛えてどうかというより、まず使用することですね。そこは違いがある様です。」

「プロは全員使ってるんですよね。」

「ほぼ全員使っていますね。アマは一部の高段者だけです。でも、プロ間の差、つまり使用しているプロ同士での差が分からないですね。」

「では、使用の時間に差が出来たらどうなりますか?」


教授は少し目を瞠って答えた。


「いいご質問ですねえ。たしかに機能する時間が伸びればその分差が出ますよね。」

「じゃあ、それを鍛えればいいんですか。」

「まあ、鍛えられるなら、そうなりますね。方法が分からないですけども。」

「薬とか出来ないもんですかね?」

「いやあ、あればいいんですけどねえ。」


教授が答えながら、一瞬動いた目線の先を、松山は見逃さなかった。

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