第2話

 棋士の性分で、念のため念のためと余裕を持って来たが、すべてスムーズに来たので、40分程早く着きそうだ。一旦研究室の場所を確認した上で、別の場所で時間を潰すことにした。


 研究室は研究室棟に入ってすぐにあった。ドアの前で部屋番号48、黒川研究室の名前を確認したところで部屋の中から声が聞こえて来た。


「あっ、羽賀さんですか。来月から使って頂く新薬が届きましたので。

あっ、はい。10%アップします。ええ、錠剤です。粉はまだ。でも、小さくなります。あ、伸びましたよ。15時間くらいですね。致死量は2錠ですから変わりません。気をつけてくださいね。15時間ですから。棋竜に間にあって良かったです。明日、伺います。」


 松山は震えながら、音を立てないように、しかし足早にその場を離れた。

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